Dezille Brothers 『だしの取りかた』
メンバーの名前を聞くだけでヨダレが出そうな、百戦錬磨のセッションマンが顔を揃え、旨みたっぷりのソウル汁を滴らせた痛快作を完成! 笑え! 踊れ! 痺れろ!
ギラギラと黒光りする男汁が満載。でも、聴後はスカッとした爽快感が押し寄せる。コクがあるのに後味スッキリ——そんな〈音の醍醐味〉を熟知した人でしか実現できないだろう味わい深い音を奏でるのが、出汁(ダシ)=デジル=Dezilleをバンド名に掲げる噂の5人組、Dezille Brothersだ。首謀者は、ソウル・マナーに精通した熱く甘いヴォーカルが魅力的なシンガー・椎名純平。2008年、彼の呼びかけで椎名純平&The Soul Forceを結成したのが始まりだ。当初のメンバーは、元SUPER BUTTER DOGのギタリストで現在はマボロシなどで活動中の竹内朋康、ピアノ・トリオのWaJaRoで活動するほかKREVAやROOT SOULなどのライヴに参加するドラマーの白根佳尚、ジャズ・ファンク・バンドのurbでの活動を経て、スガシカオやJUJUなどをサポートするベーシスト・鈴木渉、そして2010年の春には新たにSWING-O a.k.a. 45が加入した。彼はヒップホップ・バンドのJAMNUTSとして活動後、CharaやAIなどのプロデュースを手掛けるほか、45名義でアルバムを発表するなどソロ活動も活発なキーボーディスト。これはまさしくミュージシャンズ・ミュージシャンといった5人の集結である。
「もともとクラブでジャムっていた仲間なんですよ。竹ちゃんだけは音を出し合ったことがなかったけど、それこそジャム仲間のさかいゆうの紹介で繋がっているし。みんなセッション経験が豊富で、そこが信頼を寄せたいちばんの理由ですね」(椎名)。
ライヴ中心で活動していくなか、「いまの名前じゃ、カッコ良すぎねえ?と思って(笑)」(竹内)、2010年秋にDezille Brothersと改名。それにかけて、初作のタイトルも『だしの取りかた』と名付けられた。椎名が歌うバンドの作品と聞けば、ロマンティックなバラードなどを想像するかもしれない。が、断言しよう、本作にその路線はない。ミラーボールが似合うド派手なサウンドに「悪ノリ全開でMCを入れた」(SWING-O)という“はじめに”“あとがき”をはじめ、これぞ肉食系!といった男臭さが弾けるアッパーなチューンが目白押し。ファンク、ソウル、ジャズ、ヒップホップと多彩なエキスを織り交ぜ、次々と黒いグルーヴを叩き出していく様は、まるでライヴのようにスリリングだ。
「作り込むというより、ライヴ感をテーマにしていたんで、ほとんどが一発録りなんですよ。そこにセッション・バンドである僕らならではの勢いが出ると思ったんで」(SWING-O)。
「コーラスも相当少なくしたしね。いろいろ足せば豊かな味になるけど、出汁の美味しさを最大限に味わってもらうなら、何といってもシンプルに一番出汁でしょっていう」(椎名)。
「そう、要はバンドの実力を見せつけたかったってこと!……なーんてね(笑)」(竹内)。
随所にユーモアを感じさせるのも、このバンドの味だ。とりわけ、ご機嫌斜めな彼女と対峙する男の苦悩を綴った“ゴキゲンナナメ”は痛快。弱腰のリリックとワルい薫り漂うハードな演奏、その妙が何とも笑いを誘う。
「格好つけすぎるのが嫌なんですよ。常にどこかに〈隙〉は見せていたい」(竹内)。
「ブラック・ミュージックをやるには、悲しみをギリギリの笑いに転化するユーモア・センスがすごく大事だと思う。格好つけるだけがファンクではないし、ある意味笑われてナンボの音楽」(椎名)。
「そのへんは今回、純平ががっつりさらけ出してくれたからね。スタイリッシュな側面を封印して(笑)」(SWING-O)。
「椎名純平というシンガーがいて、このメンバーのこのグルーヴでいかに遊ばせてやろうかっていう。そこがおもしろい」(竹内)。
「実際、どう転がっていくかわからないおもしろさがある。Dezille Brothersはどうにでも変化していけるバンドなんだと思う」(椎名)。
音を真剣に楽しむ、音で真剣に遊ぶ。彼らの音楽からはそんな姿勢が伝わってくる。究極にカッコイイのに笑える。こんなバンド、なかなかいない。こんなバンド、待っていた!
▼関連盤を紹介。
新作に参加した元晴とダブゾンビを擁するSOIL&“PIMP”SESSIONSの2010年作『SOIL&“PIMP”SESSIONS presents STONED PIRATES RADIO』(ビクター)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年04月07日 13:38
更新: 2011年04月07日 13:38
ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)
インタヴュー・文/岡部徳枝