インタビュー

杉ちゃん&鉄平

鉄分不足解消に、厳選素材配合のこの一本!

杉ちゃん&鉄平。長岡京室内アンサンブルなどで活躍するヴァイオリニスト・岡田鉄平と、ワハハ本舗専属音楽家でもあるピアニスト、作編曲家・杉浦哲郎によるデュオグループだ。2004年に結成後、愛するクラシック作品のモチーフを用いつつ、ジャンルにこだわらない音楽エンタテインメントを提供し続けてきた。そんな彼らふたりの共通趣味は、〈鉄〉。

「小学生ぐらいからずっと鉄道模型を作ってます」
(鉄平)

「僕は乗り鉄。18きっぷで実際に旅に出ます」
(杉ちゃん)

彼らのアルバムに鉄道を素材にした『電クラ』シリーズがある。新作はその集大成にして完結編とのこと。クラシックのモチーフの間に鉄道の環境音をヴァイオリンによって再現したものが違和感なく使われた巧みな構成。アナウンスもダビングされ、楽しく、居心地がよい。いわゆる〈企画物〉にありがちな、音楽素材や企画主題を軽んずる無理解さがまるで感じられないのだ。

「最初は鉄平がさまざまな環境音の演奏ネタを持っていて、文字通り『ネタ』としてやっていた。それを音楽として昇華するということを続けてきたんです」(杉ちゃん)

「鉄道の音に関しては、まったく手を抜いていません。ただ似せてヴァイオリンで奏するだけじゃなく、例えば踏み切りなら『カンカン』ではなく、頭に半端な音がひとつついて、『カ、カンカン』と実際には鳴る。そういうものを確実に再現したい」(鉄平)

「新作は東京発で日本一周するという、音で楽しむバーチャル旅行のような今までにないものになったと思います。今年は新幹線が新青森から鹿児島中央まで通じた記念すべき年。そこで今回のアルバムの主題は『主よ、人の「のぞみ」の喜びよ』。これをオープニングに使い、人の「はやぶさ」の、「さくら」の、「とき」の、とちりばめた。その間に鉄道ソングなども交えつつ構成しました。一方、関東の私鉄の踏み切りの警報音の音程とリズムの違いをヴィヴァルディの冬のリフレインに見立てたものもある。実際の走行音も左右に飛ぶようにかぶせ、これはもうクラシックと鉄道をベースにした新たな現代作品、ミニマルミュージックかな、と」(杉ちゃん)

「演奏上も妥協はまったくしていません。技巧的な部分は輪をかけて難易度を上げている。同業者にもすげえな、とよく言われるんですが、それが嬉しいですね」(鉄平)

「前作をきっかけにたくさんの鉄道好きな仲間ができ、今回はそうした方々にも参加していただけました。かの向谷実さんにもご参加願っています」(杉ちゃん)

ジャケットのイラストも、岡田鉄平自身の手による。

「ジャケットの絵は、小学校とか幼稚園のときに見たような絵本のイメージ。夢が前へ向かって発展していくような、そういうものを描きたかったんです」(鉄平)

愛に満ちた〈企画〉は、〈コンセプト・アルバム〉へと昇華する。やっぱり愛がなくちゃね。(by矢野顕子)

『タワーレコード渋谷店6F  CLASSICAL FLOOR インストアイヴェント』

7/23(土)15:00~    観覧自由
*渋谷店、新宿店、池袋店、秋葉原店、横浜モアーズ店にてお買い上げの方にサイン会参加券を配布いたします。当日、サイン会参加券お持ちの方は、15:00からのミニライヴ終了後のサイン会にご参加いただけます。
★8月より全国ツアー開始!!
http://www.jeo.jp/sugitetsu/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年06月29日 19:00

更新: 2011年06月30日 12:03

ソース: intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)

interview & text : 磯田健一郎