カルロス菅野(熱帯JAZZ楽団)
円熟の境地に至ったラテン・ジャズの看板
精鋭17名、濃密ラテン・ジャズのビッグ・バンド・サウンドをアピールして16年。15枚目のCDリリース……って、当世、そうそうできるこっちゃない。迫力と編曲の妙で、娯楽の殿堂ここにありを証明してみせる。
「それぞれスタイルの違う連中が集まってて、みんなセクショニストじゃない。そこがこのバンドの音の特性っていうか、そこにエネルギーがあるのかな。いろんな個性がせめぎ合ってる。テンションは全然落ちてません」
7年ぶり、カヴァー・ベスト第2弾は、100曲以上のカタログから、リーダーのカルロス菅野が厳選した。
「まぁ、熱帯といえばカヴァーもんみたいな認識がある。それだけじゃ申し訳ないんで、新曲5曲を1日で録音しました。今まで、よくカヴァーされてる曲は、タイミングずらそうと抑えてきたんですが、前作ぐらいから、もうやっちゃうか!と。熱帯で聴きたいであろう、《イン・ザ・ムード》や《リベルタンゴ》も入れました」
HP上の投票で人気20曲を選出し、〈ザ・ベスト・オブ・ベスト〉ライヴがスタートしたばかり。結果「かなり突っ込んだ、メンバーのアレンジとか作曲とか、リキ入ってる曲が自然に上位に挙がった」と、実に頼もしい。
松岡直也グループ(84〜89年)、オルケスタ・デ・ラ・ルス(90〜95年)、熱帯JAZZ楽団(95年〜)と、ラテン海流の潮目、本人言うところの〈ラテンの王道〉を泳いできた菅野だが、熱帯のファン層は奈辺にありや?
「目標でもあったけど、ラテン・コアなファンじゃないです。そのために選曲の幅も広げたいと思ったし。松岡さんはフュージョン時代のトップ・アーティスト。デ・ラ・ルスは骨太のサルサ。熱帯でもっとパイを、層を広げたかった。もちろん僕らラテン大好きだけど、コアな方向に行くとコアなファンしかいなくなっちゃうんで」
コンガ奏者以前、ヴォーカリストだった彼。今や歌の出番は限られるが、ストレスは溜まらんのだろうか?
「いや、それはなかったですよ(笑)。パーカッションをやり始めてから、一時は歌を封印してたんです。でも、松岡さんのステージでも歌ってましたし、デ・ラ・ルス時代は〈コリスタ〉っていう特別な役割で、コンガも何も叩かず、NORAの横で歌って踊るだけ……本当は逆にあの時期、自分が叩かないことにフラストレーションがありました。で、熱帯になったとき、筋肉が落ち、衰えちゃってて……感覚はあっても身体をとり戻すのに2年ぐらいトレーニングしました。そのうち、だんだん余裕出てきたら、歌もいいかな〜なんて思いだして(笑)」
必死で大御所の音に喰らいつき、世界を股にかけた5年間で燃え尽きて、もはやプレーヤーとして充実の日々を迎えた菅野。目下の課題は、円熟した熱帯JAZZ楽団の看板と表現法を、次世代にどう伝えるか、だという。
「もう熱帯は、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブですから(笑)。ずーっとそこにあればいいわけで。そういう美しい老舗バンドになってみたいと思います」
『熱帯JAZZ楽団公演〜The Best of Best Live〜』
8/20(土)長野・東御市文化会館
9/3(土)北海道・幕別町百年記念ホール
9/10(土)埼玉・所沢ミューズ
9/19(月祝)兵庫・神戸国際会館
http://www.carloskannno.com/