インタビュー

類家心平

「美学」を分かち合える男たちが描いた第2章

2006年に結成された類家心平の4 PIECE BANDによる、09年のファーストアルバム『Distorted Grace』以来となる新作。

「1作目は、自分で曲を書いて曲順も決めて、ライナーノーツ的な文章も自分で書いて、とことん自分がやりたいことを盛り込めるようにセルフ・プロデュースの形で取り組んだんですけど、2作目ではこのバンドを俯瞰的に見ることができたらいいなと思ったんです」

第三者的な視点でとらえた4 PIECE BANDの〈色〉や〈方向性〉をフィードバックできれば、そこからまた新たなバンドの未来図が浮かんでくるのではないか──。その期待を託されたのは、類家心平が「リスペクトする音楽家」として公言している菊地成孔だった。

菊地成孔の『Degustation A Jazz』(04年)を熟聴していた類家が、菊地のダブ・セクステットの立ち上げ(07年)に参加し、その〈仲間〉とも〈師弟〉とも言い難い関係性が構築されていった延長線上で、本作の制作が始まることになる。

「別に、プロデュースをするからってガチガチになにかを決めたり指示したりするような人じゃないんですよ(笑)。でも、なにか1つ、コンセプトのヒントになるようなものをポンと提示してくれる。そこから僕らメンバーで、勝手に広げていくという感じですね」

これまでも類家は、菊地成孔が〈新しい音楽〉を創出する現場に立ち会ってきた。その彼だからこそ取ることのできる〈距離感〉を保ちながら、アルバムのアイデアは両者のあいだを何度も往き来し、思わぬ方向へ大きく展開していくことになる。

「オリジナルだけじゃなくカバーを入れたのは菊地さんのアイデアで、アレンジも菊地さんにお願いしました。最初のアイデアとは多少変わってしまいましたが」

カヴァーしたのは、レディ・ガガの《Porker Face》。

「あの曲は、もっとR&Bっぽい、グルーヴを強く意識したアレンジだったんですが、スタジオで演奏し始めたら、ルバートでピアノとのデュオがおもしろい展開になって、それで前半が、そんな感じになったんです」

結成以来のメンバーとのあいだには、偶発的な展開になっても4 PIECE BANDとしての音楽的なコンセプションが破綻しないだけの信頼関係が築かれている。

「自分のやりたい音楽を共有できるメンバーであることは大きいですね。言いたいことは言えるし、とことんやれるし。どんな曲を作っていっても、イヤがらずにみんな練習してくれるから(笑)」

彼らが共有しようとしているのは「サウンドの新しい組み合わせ」だと言う。それは──。

「組み合わせによって生まれる新しい何かを探す旅だと思うんです」

リリース記念イベント

10/17 (月)スターパインズカフェ(吉祥寺)
出演:類家心平4 PIECE BAND
ゲスト:菊地成孔
http://ruike.daa.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年09月05日 12:27

更新: 2011年09月05日 12:36

ソース: intoxicate vol.93 (2011年8月20日発行)

interview & text : 富澤えいち