インタビュー

OKAMOTO'S 『欲望』

 

ライヴに作品制作に、と特急で駆け抜けてきた彼らには、〈息切れする〉という概念がないのだろうか? さらに逞しくなり、余裕すら漂わせる欲望まみれの新作が最高!

 

OKAMOTO'S_A

 

いろんなタイプの曲ができるようになった

それにしても愛され上手なバンドだ。今年の夏は〈フジロック〉や〈WORLD HAPPINESS〉などのフェスに引っ張りだこなことからも十分伝わってくるだろう、OKAMOTO'Sというバンドがいかに愛すべき存在として成長しているかが。メジャー・デビューしてからも絶え間なくライヴ、ツアーをこなしているバンドは大勢いる。もちろん彼らもそう。だが、OKAMOTO'Sほどひとつひとつの出会いを実に大切にしながらキャリアを重ねているバンドもそうそういない。今年2月、バンド名の由来である岡本太郎生誕100年を祝うイヴェント〈TA-RO100祭〉に出演したのも、彼らの無邪気で愛され上手な横顔が実を結んでのことだろう。

「声をかけていただいたんです。嬉しかったですね。で、その前に、僕らみんなで太陽の塔を大阪の万博記念公園まで見に行って。そうやってインスピレーションを高めてそのイヴェントのために作った曲がシングルの“欲望を叫べ!!!!”なんです。この曲が出来てから、OKAMOTO'Sはグッと前進しましたね」(オカモトショウ、ヴォーカル)。

誰からも愛されるがゆえに、呼ばれればどこにでも飛んでいってステージに立つ彼ら。国内だけに留まらず、USやオーストラリア、香港、ヴェトナムなど海外にも積極的に活動の幅を広げ、常に多忙だ。それでもメンバーは曲を作り、ライヴで披露しながら形にしてきた。ニュー・アルバム『欲望』も過去作と同じようにタイトなスケジュールで準備をしたというが、今回はそういった制作のプロセスが少し異なったようだ。

「ライヴ・ツアーをやりながら曲を作ってレコーディングするってやり方は逆にグルーヴも出るし僕らとしてはすごくやりやすいんです。レコーディング・スタジオにいて、そこからツアーに行って、またスタジオに帰ってきて……テンションが高い状態でいいコンディションを保ちながらじっくり制作できましたね」(オカモトコウキ、ギター)。

「OKAMOTO'Sってやっぱりこの4人の個性があってのバンドなんですよね。確かに好きなことを思うようにやりたい。でも、そのためには自分たちの土台をもっとしっかり広げたいんです。だから、僕ら4人のなかでしっかり曲を育ててから聴かせたいって。いままではライヴで披露して、お客さんの反応を見て変えていったりしていたんですけど、今回は4人でしっかり曲を固めたかったんです。それがいまの僕らならできるって自信もあったし」(ショウ)。

14曲入りと、今回もガッツリとヴォリュームがある。なかにはハマ・オカモト(ベース)が作曲した“ハマ・オカモトの自由時間”や、ショウによる“ハーフタイムショウ”などのインストがインタールードのように挿入されていたり、コウキとショウが2人で作曲した“Get Some Money”“オ・マ・エ”がアルバム後半で大きな存在感を放つなど、楽曲そのものもそうだが、ソングライティング自体にヴァリエーションが増えた印象だ。一方でインディー時代のナンバー“Insane Man”を新たに録り直したりと、原点に返ったような、パンク色の強いラフなナンバーもある。

「作り方の大筋はこれまでと同じで、ショウとコウキが中心になってます。ただ、自然にみんな自分の曲を書いて持ってきたりするようになったんですよ。いろんなタイプの曲を消化できるようになってきたんでしょうね。前までだったらやりたくてもできなかったような曲も、いまならできるんです。“Future Eye”なんかその典型ですよね」(ハマ)。

「“Insane Man”は結成当初からあるかなり古い曲なんですけど、今回録り直してみてかなり雰囲気が変わりました。前はもっと暗くてこもっていて〈サタニック・マジェスティーズ〉って感じだったんですけど、今回は〈ジャンピン・ジャック・フラッシュ〉って感じになったんですよね(笑)。パーティーっぽさが加わってるんです。こんな感じで僕らの受け皿が広くなったっていう実感はありますね。例えば、『10'S』に入っていた“おやすみ君のこと”なんかは、曲が出来た時は〈こんな曲を俺らがやるの?〉って、自分たちでもちょっとテレがあったんです。でも、いまでは人気曲だし自信を持って演奏できるようになっている。そういう感覚が今回のアルバムにも表れてるんじゃないかって気がしますね」(オカモトレイジ、ドラムス)。

 

ここからが本当のOKAMOTO'S

毎度お楽しみのカヴァー曲は、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの“Give It Away”、沢田研二の“カサブランカ・ダンディ”、エルヴィス・コステロの“Pump It Up”という選曲。レッチリとジュリーは原曲に忠実ながら、“Pump It Up”はスタジオでのリハーサルさながらの、砕けた空気をそのままパックしたようなユーモラスな仕上がりで、彼らの人間味豊かな側面が感じ取れる。今作中、彼らが愛されるバンドである理由を実感できる部分のひとつだ。

「あの曲の会話部分は実際にみんなで話していた内容なんです。で、じゃあ……ってそれをそのまま頭に付けることにして。そういうバカバカしいことも今回はできるようになったってことなんですよね。いままでは〈10代〉ってところばかりが強調されて、別にイヤとかではないんですけど、いつまでもそういう目で見られるのもねっていうか。第一もう10代じゃないわけで(笑)。だったらもう自分たちの感覚に正直に作っていこうよって感じで素直に従ったら、こういうアルバムになった。本当にヒューマンな作品だと思いますね」(ハマ)。

無邪気にロックが好き。けれど、ロックというスタイル、ジャンルだけを好きなわけではないと4人は口を揃える。僕らが僕らのまま好きな音楽をやっている、と。恐らくその真っ直ぐな感覚が多くのリスナーだけではなく、多くのミュージシャン仲間や先輩バンドたちの胸を打っているのだろう。4人もそこに気付いていると見えて、現在の自分たちの成長を語らせるとキラキラと目を輝かせ、実に饒舌だ。〈これがOKAMOTO'Sの第一歩だ〉と。

「ヒップホップみたいな曲でも僕らがやったらロックになるというかロックに引き寄せる、だからこそやる意味がある、みたいな」(レイジ)。

「ロックというか、OKAMOTO'Sに引き寄せてるって感じかな。ここからが本当のOKAMOTO'Sですよ」(ショウ)。

「うん、僕らのフィルターを通してるって、本当にそれがピッタリ。で、もういまのフィルターを通らないものは何もないってくらい開かれてきたと思います」(ハマ)。

「毎回毎回アルバムごとに新しい扉を開いているような実感がありますね。やりたいと思えるような曲を自然といまはやれていて、今回はそこがいちばん大きく成長した部分だと思いますね」(コウキ)。

 

▼『欲望』の先行シングル“欲望を叫べ!!!!”(ARIOLA JAPAN)

 

▼『欲望』でカヴァーしたアーティストの作品を紹介

左から、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの99年作『Californication』(Warner Bros.)、沢田研二のベスト盤『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』(ユニバーサル)、エルヴィス・コステロの78年作『This Year's Model』(Radar)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年12月28日 22:00

更新: 2011年12月28日 22:00

ソース: bounce 335号(2011年8月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野

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