2NE1 『NOLZA』
21世紀に、新たな進化(New Evolution)を、みんなに(To Anyone)届ける2NE1。何をどんな文脈で聴いても自由だけど、少なくともリアーナ『Good Girl Gone Bad』以降(ガガ以降じゃないっすよ)のスタンダードなアーバン・ポップを普通に聴き進めていけば自然にそこに辿り着くだろうし、M.I.A.やニッキー・ミナージュと並列で聴くようなリスナーもいるはずだ。もちろん、K-Popという括りで応援してきたファンが多いのは当然として、〈ガール・パワー〉というキーワードを手繰って往年のスパイス・ガールズやTLCを連想する人がいてもまったく不思議ではないだろう。
何が言いたいのかというと、特に2NE1には、肌の色や国籍で音まで分類しがちな人にはわからない種類のタグがいくつも付されていて、それが彼女らへの広範な支持に繋がっているということ。リーダーのCLも「もうK-PopやJ-Popという境界は完全になくなったと思います。だから私たちも韓国のための音楽じゃなく、世界のすべての人たちといっしょに楽しめる楽曲を作るように努力しています」と語る。境界を設けるかどうかは受け手次第だとしても、例えばデヴ“In The Dark”やシェール・ロイド“Swagger Jagger”みたいにコマーシャルかつエッジーな先端ポップスとの圧倒的な同時代性を備えていることが、2NE1最大の魅力だと個人的には思っている。
2NE1は、BIGBANGを輩出した大手プロダクションのYGによって2009年に結成された4人組。デビューから立て続けにヒットを飛ばし、すでに本国での支持を盤石のものにしている彼女たちが、ミニ・アルバム『NOLZA』でいよいよ日本デビューを飾った。ライヴ前に交わす掛け声〈ノルジャ〉から取られた表題には、「ファンの皆さんと同じ時間を純粋にいっしょに楽しみたい!という気持ちが込められています」とのこと。中身は先だって本国で登場した2枚目のミニ・アルバムを日本語詞で再録したものとなり、譜割やフロウの変化によって原曲とは違って響く部分も多い。
「言葉を変えてメロディーに乗せる時に、どうしても元の雰囲気をそのまま表現するのが難しいんですよね。作った時のフィーリングは伝えたいし、2NE1の楽曲は歌詞の意味だけでなく言葉の乗せ方も重要なので、その部分は試行錯誤しました」。
幕開けはキレのあるセルフ・ボースティングを格好良くキメるブーティーな“I AM THE BEST”だが、続く“UGLY”では一転して外見へのコンプレックスが情感たっぷりに歌われる。いずれも根底にあるのは同性の心情に寄り添う眼差しだ。そんな姿はメランコリックなストリングスの美しいフォーキーな“LONELY”にも顕著だろう。
「“LONELY”は私たちのイメージとは正反対の姿を見せられる機会だったので、新しい挑戦でした。〈あなたといっしょにいても寂しい〉という、なかなか口に出せない女の子の本音を歌っているんです」。
本音という意味では“HATE YOU”も聴きモノだろう。本来は曲名が“F**k You”だったというだけあって、男性には手厳しい言葉が威勢良く吐き出されている。
「私たちは以前から“I Don't Care”“Go Away”などで、〈男なんていらない〉〈関係ない〉という気持ちを表現してきました。女性がスッキリしてくれたら嬉しいですし、女は弱いと思ってる男性にも、私たちの曲やパフォーマンスに触れてほしいですね」。
歯に衣着せぬ曲の格好良さと同じくらい4人の個性となっているのがヴィヴィッドなファッションも含めたアイコニックなヴィジュアル・イメージだろう。新進アーティストのマリ・キムが手掛けたアートワークにもそのあたりのこだわりは窺えるが、「ファッションのスタイルも、すべては音楽から始まっています」とキッパリ。「型にはまるのではなく、新しいものを作り続けたいです」と真摯な表情を覗かせてくれた。
この後に予定されているUSデビュー作ではウィル・アイ・アムが多くの楽曲をプロデュースし、ディプロのような〈顔役〉にも注目されている4人だが、「私たちが外国の有名な誰かのおかげでここまで来られたわけじゃないように、これからも私たちが楽しんで創造的にやっていけば、みんながそれを新鮮だと感じてくれると思います」という意識の高さも頼もしい限りだ。
「どこで活動しても、マインドに変わりはないです。2NE1は2NE1です。いままで通り一生懸命に、楽しくやります」。
PROFILE/2NE1
CL(ラップ/ヴォーカル)、DARA(ヴォーカル)、BOM(ヴォーカル)、MINZY(ラップ/ヴォーカル)から成る韓国のガールズ・グループ。YG作品に参加していたBOMとCL、フィリピンでソロ活動していたDARA、ダンス動画で注目されたMINZYが集まって2009年より活動を始め、3月にBIGBANGとのコラボ曲“Lollipop”を発表。5月に初のシングル“Fire”、7月にミニ・アルバム『2NE1 1st Mini Album』をリリースし、本国を中心に人気を博す。個々のソロ活動を経て2010年に初のフル・アルバム『To Anyone』を発表。今年に入ってからは『2NE1 2nd Mini Album』もヒットさせ、このたび同作をベースにした初の日本語ミニ・アルバム『NOLZA』(YGEX)をリリースしたばかり。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年10月07日 21:40
更新: 2011年10月07日 21:40
ソース: bounce 336号 (2011年9月25日発行)
構成・文/出嶌孝次