インタビュー

2Cellos (Sulic & Hauser)

憑依するロックという衝動

2CELLOS。今年1月、YouTubeにアップした《スムーズ・クリミナル》のチェロ二本だけによるカヴァーが3週間で300万回再生を記録し、瞬く間にメジャーデビューが決まったクロアチア出身のチェリスト、ルカ・スーリッチとステファン・ハウザーによるユニットだ。ウィーン大学に学んだスリックは2009年のルトスワフスキ国際チェロコンクールの優勝者、ハウザーはローヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックに学んだロストロポーヴィチ最後の弟子の一人。現在ふたりは動画を見たエルトン・ジョンから直電で誘いを受けて彼のツアーにも参加している。そんな彼らがユニットを組み、ビート・ミュージックに挑んだ動機は何だろうか?

「ぼくたちはクラシックだけを演奏することに少し窮屈さを感じていましたし、ぼくたちの中に姿を現すべき〈野性〉が棲んでいることも感じていました。もちろんぼくたちはクラシックを愛していますし、演奏し続けるつもりでいます。しかし今やっていることが十全にぼくたちを表現しているとも感じています。クラシックにあるような制限もなく、より創造的に自由になれます。エキサイティングなことですよね。二人とも何か新しく、クレイジーで、なおかつ個性的、革新的なものをやりたいと思ってきたんです。それにぼくたちはロックンロールをもう一度、時代のものに引き戻したいとも思っています。なにしろ今どきのキッズが聴いている音楽は、ぼくたちをひどく落ち込ませるような代物なのでね。それにこのプロジェクトでキッズたちをチェロにひきつけることが出来ると考えているんです」

ロストロポーヴィチやオイストラフと同時にU2やマイケル・ジャクソン、AC/DCがヒーローだったという彼らのデビューアルバムは、他の楽器は一切交えず徹底的に2人のチェロだけでビートもワイルドさも叙情性も表現した、彼らのチェロとロックへの愛情がたっぷりと詰め込まれた内容となった。

「レパートリーを決めるに当たって、まずその曲がぼくらに語りかけてくれるか、エモーショナルで芸術的な価値があるかどうか、チェロでよく鳴る曲かを考えます。ステファンはマイケルとスティングの大ファンで、ルカはU2とガンズ・アンド・ローゼスの大ファンなんですよ。一方アルバムの選曲には今の時代を反映したものを入れるべきだと考えました。キングス・オブ・レオンとミューズのナンバーは過去の偉大なバンドの伝統の上にあると思っています。収録した楽曲にはそれぞれに聴き所があります。例えば《スムーズ・クリミナル》やニルヴァーナ、それに《ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル》ではチェロがどんなにハードにロックしうるかお聴きいただけるでしょう! 《フラジャイル〉や《ハート》、それにU2のナンバーでは、チェロがいかに素晴らしい雰囲気を創造しうるか、美しく感動的でロマンティックで奥深いものを奏しうるかをお聴きいただけると思っています」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年10月13日 13:17

ソース: intoxicate vol.93 (2011年8月20日発行)

interview & text : 磯田健一郎