金子鈴太郎&須藤千晴
幅広いレパートリーで名門オーケストラと室内アンサンブルを渡り歩くチェリストと、ソロでの活躍もめざましい麗しきピアニスト。共に若手実力派の二人が、真摯かつ情熱的なデュオ演奏でロマン派の傑作を聴かせるアルバムが登場。
「レコーデイングが決まり、先ずはブラームスだよねって、迷わず選んだかも。過去に弾いた時の記憶だけでなく、ソナタ以外の室内楽や交響曲での経験 も思い 起こしつつ演奏しました。どの時代のブラームスも好きです。二つの違いをひとことでいうなら、第1番はわりとチェロらしい位置の深みのある音で勝負してい て、第2番ではかなり自由に歌わせている感じ、でしょうか」(金子)
「第1番は初めてヨーロッパに行った時、講習会で聴いた印象が強烈で、今でもその暗く重苦しい雰囲気に自分でもこだわってしまうんです。それに対して第2番はピアノも解放的ですよね」(須藤)
互いを演奏者として意識してから共演までに長い道程があったとか。それだけに待望のデュオの誕生となった。
「ヴァイオリン等と比べて、バランス的に手強い相手ですが個人的にはチェロが大好きで…。それに金子さんは単なるチェリストというより、音楽家とし て知識 が豊富な頼れる人。彼を通して、ピアニストとしてはなかなか掴みにくい、オーケストラやスター指揮者との演奏体験や、交響曲での経験を吸収することができ て勉強になりました。演奏の懐も深いし、共演は楽しかった」(須藤)
「今までたくさんのピアニストと一緒に演奏してきましたが、彼女ほど僕の言いたいことをきちんと理解してくれた人はそういなかったです。それも『ではまた次の機会までに考えておきます』じゃなくて、その場でぱっと応えてくれて。凄く信頼できてやりがいがあった」(金子)
カップリング曲はブラームスと縁も深いシューマン。当初ホルンとピアノのために作曲されたとされる作品だ。
「比較する楽しみはありますね。自分でもホルン版の録音を熱心に聴けたし。それと実はホルン奏者といっぱい話をしましたね。彼らに『チェロだとこういう風にできるからいいよね、羨ましい』なんて言われて…」(金子)
「アダージョとアレグロでわかりやすい対比になっているところが好きです。アレグロに入ると、もしかしたらピアノはちょっと陰にまわっているかなっていう微妙な感じが。チェロとピアノの掛け合いで途切れずに長いフレーズを作り上げるところもいいですね」(須藤)
「リハでアダージョを朝一にかしこまって弾いたら最悪でした。それでブラームスの後で改めて演奏したら俄然スイッチが入って、何て素敵な曲なんだろうって」(金子)
「力が入るとうまくいかない曲ですよね。より自然な気持ちで心底楽しむように弾くのがベスト」(須藤)
10月には発売記念リサイタルを予定。浮き世を忘れさせて音楽の世界に誘う、渾身のデュオをぜひ生でも!