インタビュー

タンブッコ


メキシコと日本をつなぐアンサンブル

日本と海外の文化交流を支援している国際交流基金の事業に「国際交流基金賞」がある。これは活動を通じて我が国の芸術、文化を海外に広く紹介し、また引き続き大きな影響力が期待される個人やグループに授賞するものだが、2011年度はメキシコのパーカッションアンサンブル、タンブッコが選ばれた。

1993年に結成されたタンブッコは、リカルド・ガヤルド、ラウル・トゥドン、アルフレッド・ブリンガス、ハビエル・アルバレスというそれぞれソリストとしても活躍する演奏家によるグループだ。リリースしたアルバムの中にはグラミー賞にノミネートされたものもあるが、日本人の作曲家だけを集めたアルバムも発表している。「ほかにスペインとかコロンビアの作曲家を集めたアルバムも発表しているけれど、多かれ少なかれ僕らとコンタクトがあった作曲家の作品を採り上げているんだ」と音楽監督のリカルドは語る。カナダ、バンフでマリンバ奏者の安倍圭子氏に師事したというリカルドだが、日本と彼らをつなぐ第一歩も、そこでの師弟と出会いだったわけだ。

今回の授賞にはメキシコで演奏家、教育者としても活躍するヴァイオリニスト、黒沼ユリ子氏の強い推薦があったという。黒沼氏は彼らの〈貢献〉について「彼らは日本の作曲家に作品を委嘱するだけでなく、締太鼓などの日本の楽器を外国の作曲家に紹介し、作品に取り込んできました。自分の国の楽器でもないのにね。つまり我々が知らないところで日本を紹介してくれたのです」と語ってくれた。今回、授賞を記念して行われたコンサートでは、二十絃箏の吉村七恵、尺八の三橋貴風の両氏を迎えた《音 音 Ⅳ~尺八、二十絃琴、打楽器群の為に》が披露されたが、この作品も2005年にセルバンティーノ国際音楽祭(メキシコ)にて委嘱されたもの。そして吉村、三橋両氏も度々タンブッコと共演している仲でもある。

こうしてタンブッコは日本との太いパイプを手にしたわけだが、これまで彼らが採り上げてきた武満徹、近藤譲、西村朗作曲家だけでなく、近年頭角を現している若手作家への興味はどうなのか。「もちろんものすごく興味があります。だから今回の公演や来日で、もっと沢山の皆さんとコンタクトできることを望んでいるんです」と、うれしい答えが返ってきた。タンブッコと日本の作曲家とのコラボレーションで、さらに新しい音楽が生まれることを、大いに期待したい。


カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年01月26日 18:45

ソース: intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)

取材・文 渡部晋也