ルイジ・ピオヴァーノ
イタリアの優れたチェロ演奏を支える職人
ルイジ・ピオヴァーノはイタリアのチェリストで、オーケストラを組織して独自の音楽を追求する音楽家でもある。ローマ・サンタ・チェチーリア管の首席チェロ奏者でもあるが、オーケストラの来日公演と同じ時期にソロ活動のために来日していた。そのあたり、如何にも?イタリア的な個人主義とも思えるのだが、そのおかげで彼の素晴らしいソロを私たちは聴くことが出来た。
「たまたま以前から決まっていたソロの予定とオーケストラの来日が合致してしまっただけなんですが。ちょっと奇妙に思われますよね(笑い)」
イタリアの演奏家はフランクな方が多いけれども、それゆえ音楽性が豊かとも感じる。
「イタリアには演奏の偉大な伝統があり、それが現在まで繋がっていると言えます。チェロにしてもそうです。バロック時代には優れたチェリ ストはイタリア人しかいなかった。そして彼らがヨーロッパ中に広がり、その音楽伝統を伝えたのです。その結果、ロシア、フランスなどに優れたチェロ演奏の流派が生まれました。私の師であるラドゥ・アルドゥレスクはその両方の流派の演奏スタイルを受け継ぐ希有なチェリストでした。その結果、イタリア、ロシア、フランスのスタイルが私の中で一緒になっているんです」
父親は作曲家&ピアニストだった。その影響でチェロを始め、スイスのメニューイン・インターナショナル音楽アカデミーでアルドゥレスクに薫陶を受けた。その後ソロ、室内楽、オーケストラなどで活動を続けている。
「ともかく忙しくしています。クラリネット奏者のアレッサンドロ・カルボナーレも同じようですが、休み無く仕事をしているんですよ。え? イタリア人らしくないって。イタリア人は実は勤勉なんですよ、ホントに。好きな音楽のためならば、時間を惜しむことはしません(笑い)」
彼が力を傾注している活動の中に、自身が創設したカンパーニャ室内管弦楽団がある。
「いわゆる室内オーケストラですが、幅広いレパートリーを演奏していますし、バッハの作品(鍵盤用の「イタリア協奏曲」)を 父が編曲してピアノ協奏曲風に仕立てた曲を演奏する予定もあるんです。財政的な問題はありますが、やり甲斐のある仕事ですね」
そのオーケストラのライヴも聴いてみたいが、彼らの優れた演奏はCDからも想像出来るはず。一度チェックしてみて欲しい。