INTERVIEW(2)――削ぎ落とすことによってさらに際立った自分らしさ
削ぎ落とすことによってさらに際立った自分らしさ
——というニュー・アルバムを目下制作中のようですけど、まずはシングル。フリーペーパーとの連動というおもしろい形でのリリースですね。
「タワーレコードのみなさんもこの企画にはノリ気で、不定期ではありますけど、しばらく続けようってことになってます。フリーペーパーは、毎回特集を組んで……とはいっても、堅い感じのものじゃなく、1号目から〈ヒーロー特集〉っていう、いろんな人が好きなヒーローについて書いてたり(笑)」
——ロフトプラスワンでやってるイヴェント(レキシこと池田貴史との不定期トーク・イヴェント〈チカゴーロ・ドナーノ〉)の延長っぽいですね。
「そうそう、そういう感じでやってます。こういうのもデビュー当時の自分だったらやれてない感じですね。音楽家として常に遊べるようになってきたからこそで、作っててすごく楽しいですよ」
——で、曲のほうが“あのコ猫かいな”。リリース日の2月22日が猫の日というのを資料見て初めて知りましたけど(笑)、今回の曲は、音の要素としてはいろんなスパイスが入ってるんだけど、非常に鳴りがシンプルだし、ヴォーカルを活かした感じ、それこそ〈イイ歌〉歌えてるっていう話を聞いて合点がいくものになってますね。
「バンドで録った音をあとで編集するっていう、そのやり方は『VIVAP』(2010年)から始まってるんですけど、今回もそうですね。ドラムはタイトに、シンバルを響かせない……とか、ドラムと歌を前に出して、あとは自由に、いろんな音が出たり入ったりするっていう、そういうサウンドを〈最新の堂島サウンド〉だと思ってやりはじめて、今回はそれがもっとヤンチャな感じになってると思いますね。いろんな音が出たり入ったりしてるんですけど、それを一向に気にしてないヴォーカル曲っていう」
——結構隙間のあるトラックですよね。
「そう、結構スカスカなんですよね。ハイパーな音にしていくっていうのは、いままでやってきたことだし、2000年からGO-GO KING RECORDERSとの7人でやりはじめて、さらにハイパーになっていって10人編成とか15人編成でライヴやったり……そうやって集団躁状態みたいなものを経て、自分ひとりのキャラクターとして何をやっていくかっていうテーマに、3、4年前から焦点を絞り始めたんですけど、その最新版っていうのがこの曲を含め、ニュー・アルバムの形になってますね。Twitter……の話になりますけど、あれをやってると、自分がどういうふうなことを言ったらおもしろがられるかとか、どういうことを言うとこの人っぽいと思われるのかっていうことがわかってくるんですよ。ユーモアの持ち方みたいなのがわかったし、Twitterってそんなに広い世界の話じゃないと思うんだけど、少なくとも1万何千人フォロワーがいるなかで、堂島孝平ってこういうことを言うヤツなんだっていう自分のなかで発見があって。だから、いま音楽を、ヴォーカルを前に出したアルバムを作ってるっていうのは、僕自身が僕のキャラクター、自分でもあるし歌の中の主人公でもあると思うんだけど、それをイキイキとさせる歌を書くっていうのが楽しいと思えてるからなんですよね。真面目なことを歌わないと歌にならないとか、良いこと言わないと歌にならないとかっていうところではぜんぜん作ってなくて。ある種のスタンダードとか常套句みたいなものを入れちゃうことは、昔から古いって思っていたけど、そこからさらに削ぎ落とすというかね、自分のなかのスタンダードと思っていたものも削ぎ落として、それこそTwitterで、140字のなかで完結するような歌を、作詞家としてもシンガーとしても作るのが楽しいんですよね」
——カップリングの“どぶそうじ”もその顕れ?
「これはね、20歳ぐらいのときに作った曲で、どうしても出したいわけじゃないんですけど(笑)、ディレクターが曲も聴かないうちからタイトルを見て気に入って。どぶそうじってホントにしたくないんだよねっていう歌なんだって説明したら、〈それ入れましょう〉って(笑)」
——まあ、こういう企画盤のときじゃないと入れられない曲ではありますね。
「そうなんですよ。せっかくの企画モノだし、普段できないようなことをしようかなって。でも、意外と気に入ってくれる人がいて。ある人は、この曲聴いて〈原発の歌ですか?〉って。たしかにそう言われるとそうもとれるかと(笑)。でもまあ、あくまでも地域コミュニティーのなかで汚物をどうするかっていう歌なんで(笑)」
——物は考えよう(笑)。でもまあ、アルバムも俄然楽しみになってきます!
「いまは自分の音楽の在り方とか作り方を含めて、またユーモアを持ってやれるタイミングになってきたし、昔よりオトナになってるぶん、ヤンチャができるというか。で、いろいろ削ぎ落として音楽をやってみると、ソリッドななかにもスウィートさがあったりとか、堂島孝平という人間がより伝わりやすい楽曲ばかり出てきてますね。楽しみにしていただいて良いかと思いますよ」