ROBERT GLASPER 『Double Booked』 Blue Note(2009)
トリオ編成とエクスペリメントでの録音を半々ずつ収録したダブル・ブッキング盤。モス・デフとの“4eva”や常連のビラルを招いた“All Matter”など、『Black Radio』が気になった人はこちらも必聴だ。*出嶌
BRIAN CULBERTSON 『XII』 GRP(2010)
肌は白いが黒い感覚を持つ鍵盤/トロンボーン奏者の近作。ファンクの大御所やレディシなどを招いたアルバムも記憶に新しいが、ブライアン・マクナイトやアヴァントらのR&Bシンガーを招いたこれもアーバンなジャズ盤だ。*林
GREGORY PORTER 『Water』 Motema(2010)
ブロードウェイで経験を積んだ新鋭ジャズ・シンガー。ディープなバリトンで時にシャウトも交えて歌い上げる本デビュー作(昨年グラミーにノミネート)もソウルとジャズの距離を縮めた一枚だろう。2作目も到着したばかり。*林
TERRI LYNE CARRINGTON 『The Mosaic Project』 Concord(2011)
ジャズを中心に活躍する女流打楽器奏者が、新旧の女性演奏家/ヴォーカリスト20名以上を招いて仕上げたフェミニズム的なテーマの企画盤。ディー・ディー・ブリッジウォーター、シーラ・E、ノーナ・ヘンドリックス、カサンドラ・ウィルソンらがそれぞれ名技を披露する豪華客演ぶりは、ロバート・グラスパーの新作ともダブるか。エスペランサの歌う軽快でメロウな“Crayola”はいまや定番。*林
NAJEE 『The Smooth Side Of Soul』 Shanachie(2012)
数多のR&Bアーティストと共演してきたスムース・ジャズ界きってのサックス奏者の新作。ソウルフルに歌うようなサックスは相変わらずだが、今回はフィル・ペリーを招いた先行曲で4つ打ち系のダンス・チューンも披露。*林
HILTON FELTON 『Family And Friends』 Hilton's Concept/SHOUT!(1975)
これは復刻もの。現ワシントンDCのR&Bシーンを支えるW・エリントン・フェルトンの父で、ダニー・ハサウェイとハワード大学の同窓生でもあった鍵盤奏者の75年作だ。エレピやオルガンを主役としたジャズ・ファンク盤で、ジャクソン5などのソウル名曲カヴァーも含む。無名時代のタワサ・エイジーやアンジェラ・ウィンブッシュがソロで歌うソウル・ジャズなマナーは、いまこそ評価したい。*林
NICHOLAS PAYTON 『Bitches』 In + Out(2012)
歌も披露するトランぺッターの最近作は、そのヘタウマなバリトンを前面に押し出したヴォーカル志向のジャズ盤。エスペランサ、エンダンビ、カサンドラ・ウィルソンといったオーガニックな女性シンガーをゲストに迎え、ローズがたゆたう激メロウなネオ・ソウル調からプリンス風のビート曲までをやってのける。制作をサポートしたマーク・ド・クライヴロウのクラブ・ジャズ感覚とも相性抜群。*林
ESPERANZA SPALDING 『Radio Music Society』 Heads Up(2012)
グラミー新人賞を獲得した前作『Chamber Music Society』と対になる4作目。Q・ティップのプロデュース参加を得て路上感と都会的なメロウネスを増強。“I Can't Help It”のカヴァーが素晴らしい。*出嶌
平戸祐介 『Speak Own Words』 EMI Music Japan(2012)
quasimodeの鍵盤奏者がグラスパーのダブル・ブッキング路線に感化されて(?)作り上げたソロ・アルバム。トリオ演奏とヒップホップ系トラックメイカーとの共作を両輪にして、従来型のジャズに留まらないスタイルを模索しつつ、極めてポップに仕上げられた各曲の聴き応えは十分。ハービー・ハンコックを思わせる効果的なヴォコーダー歌唱やユニークなカヴァーのチョイスもエクスペリメントに重なる部分だ。*出嶌
JACQUES SCHWARZ-BART 『Rise Above』 Dreyfus(2010)
ディアンジェロやRHファクター、アンプ・フィドラーらと共演してきたサックス奏者の意欲作。馴染みのステファニー・マッケイが全編でリリカルな歌をしっとり聴かせる、粋でアダルトなアーバン・ジャズの佳盤! *出嶌
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2012年02月22日 00:00
更新: 2012年02月22日 00:00
ソース: bounce 341号(2012年2月25日発行号)
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次