インタビュー

ガブリエル・リプキン

新シリーズ、〈チェロ・ヒロイクス〉、いよいよ始動

昨年12月にインバル指揮東京都響とショスタコーヴィチの第2協奏曲を披露して、絶賛を浴びたガブリエル・リプキン。〈愛される子供〉もしくは〈優しい言葉を発する者〉という姓の通り、この名手の奏でる音楽はきわめて滋味溢れ、音色は素晴らしく美しい。今年発売される彼の新しいアルバムは、〈チェロ・ヒロイクス(Cello Heroics)〉と名付けられたシリーズに連なる4枚。これは、2010年に出されたデュアル・ディスク(1枚でCDとDVDの両機能を併せ持つ)の再展開である。

「私はよいものを届けたいという願いから、自分のレーベル(リプキン・プロダクションズ)を立ち上げ、アルバムをエクスクルーシヴ・エディション(高級・高品質盤)としてリリースしてきました。その結果、確かに高い評価はいただきましたが、同時に多くの友人たちから、高価だとの問題提起もされました。そこで会社そのものを再編成して、白くて美しいデジパックのような形で出すことにしたのです。今後〈ヒロイクス〉・シリーズは、この通常版とエクスクルーシヴ版の両方を並行して出すようにします。将来的には、いわゆるオーディオファイルに向けた数百枚程度限定のハイスペック版も出してゆくつもりです」
付属するリプキン校訂のチェロのパート譜も、本シリーズの魅力のひとつだ。

「沢山の資料をもとに長い時間をかけて研究し、フィンガリングやボウイング、アーティキュレイションを考えました。それらを、×や、などの記号を用いて表しています。もしチェロを弾く方ならば、2つの音の関係をどうするか、どう指をスライドさせたらよいかなど、私の奏法が完璧にわかるでしょう」

ヒロイクスは将来的に協奏曲百曲録音を目指すという。その他にもプロジェクトは目白押しだ。

「次にリリースするのは、ブロッホ《夜》、バーバー作品11、ドヴォルジャーク《アメリカ》、他を収録したリプキン四重奏団の『New Worlds』です。次にザスラフスキとの2枚(ベートーヴェン、ブラームス、ブリテン&シューマン、シューベルト、フランク)。ヒロイクスはドヴォルジャーク、ブロッホ、チャイコフスキーと続きます」

最後に、日本がとても大変な時期に来て下さり、ありがとうございました。次の来日は……。

「6月にスロヴァキア・フィルと、12月には三ツ橋敬子さん指揮の東京フィルに弾きに来ます」

LIVE INFORMATION
6/28(木)19:00 サントリーホール(東京)
7/1(日)14:00 ザ・シンフォニーホール(大阪)
レオシュ・スワロフスキー(指揮)スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団
http://www.concert.co.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年03月21日 15:11

ソース: intoxicate vol.96(2012年2月20日発行号)

取材・文 松本學(音楽批評)