小林聡美&原田知世 『東京オアシス』

　本作は｢かもめ食堂｣、｢めがね｣を手掛ける製作チームが、東京で生きる男女のひとときの交流を、
オムニバス風の構成で描き出していくスローライフ･ムービー。
今やこのプロジェクトに欠かすことの出来ない小林聡美と、今回初参加となる原田知世に
今作に対する思いや自身にとっての<オアシス>について語ってもらった。

｢最初は小さな場所でも、その輪が少しずつ広がっていくといいなって思います｣

―今回、初めて共演されてみていかがでした?

 小林｢原田さんはイメージどおりの方でしたね。透明感があって
心地好い空気を身に纏っているというか。
それでいて自分の意見を整理して、きちんと伝えられる方だなって思いました。
私はたいてい、ぽや～んとしてますけど(笑)｣

原田｢そんなことないですよ(笑)。私は追いつめられて〈なんとかしなきゃ！〉って
やってるだけで。聡美さんはすごく自然な演技をされる方で、
お芝居に人柄が滲み出ているような気がしていたんです。
きっと、日々の生活を大切にしている方なんだろうなあって。
実際に お会いして、私もイメージしていた通りの方だなって思いました｣

―映画のなかで、原田さんが演じるキクチが、小林さん演じるトウコに胸の内を告白するくだりは、
カメラの長回しでじっくり見せる印象的なシーンですね。

原田｢あそこは緊張しましたね。普通はそういうことはしないのですが、
メイク室でも自然に聡美さんとセリフ合わせが始まって何度か練習しました｣

小林｢セリフは私の方が少ないんですけど、原田さんの集中を途切れさせないようにする佇まいも大切だし。
途中で入れるセリフを失敗しないようにとか、やっぱり私も緊張しました｣

小林｢まあ、いっちゃなんですけどラクチンですね(笑)。私生活がベールに包まれた女優というのなら
また別でしょうけど、〈どこかで見たことある〉っていう経験は自分にもありますからね。
ただ、もやもやした気持ちを引きずる性格は私とは違うところかな｣

原田｢そうですね。周囲からは順調にいってるように見えても自分に対する疑問を感じていて、
そのことに気付いた自分をごまかせない。すごく真面目な人なんです｣

―今回DVDの特典映像で、本編からスピンオフした新エピソードが5本追加されていますが、
｢たき火｣はキクチの後日譚みたいな話ですね。

原田｢セリフがなくて後でモノローグを加えて編集したのですが、撮影中はどんな風に仕上がるのかわからなくて。
ちょっと実験的な感じでしたね｣

小林｢あれはクランクアップした直後に撮ったんですけど、道路沿いのベンチに座って、 照明も当たってないし。
ボロボロの状態の二人です(笑)｣
 

―｢夜更けのボロボロの二人｣ (笑)。では最後に、お二人にとって〈オアシス〉ってどんな場所でしょう?

小林｢人が機嫌よくいられる場所かな。最初は小さな場所でも、その輪が少しずつ広がっていくといいなって思います｣

原田｢映画でもたい(まさこ)さんが演じたおばあさんが言っていたように、たまたま映画館で横に座った
知らない人でも、同じ映画を一緒に観たと思ったら親近感がわいたりするじゃないですか。
そういう気持ちが広がって、みんながハッピーな気持ちを共有できる場所が生まれるといいですよね｣