パトリック・ハリルド
© LSO / Kevin Leighton
ロンドンの名門オケが自主レーベルを創設した理由とは
ロンドンを代表するオーケストラ、いやヨーロッパでも五指に入るロンドン交響楽団。最近では自分たちの演奏会をネット上でライヴ配信しているベルリン・フィルなど、新しい形の発信方法が試みられているが、実はその先鞭を付けたのはロンドン交響楽団であった。
「LSOLiveが開始されたのは2000年のこと。当初はコンセプトが理解されず、反対する楽団員もいたけれど、当時運営に関わっていた私には確信がありました。すでにメジャー・レーベルによるオーケストラの新規録音は激減しており、大きなウェイトを占めていた録音からの収入は打撃を受けていました。それを解消するためには、自分たちから発信すべきだと」
そう語るのはロンドン響・首席テューバ奏者を務めるパトリック・ハリルド氏。英国を代表するテューバ奏者として知られている。
「その結果として、コリン・デイヴィスによるベルリオーズの全集など素晴らしい企画が実現しました。メジャー・レーベルには出来ない仕事だと思いますよ。本来なら録音として残すべき作品や演奏を、定期演奏会などと連動して収録していく。それによってコストダウンも可能で、またレアな作品の録音も残せるようになりました」
現在は首席指揮者であるゲルギエフのもと、マーラーの交響曲全集と多彩なロシア物のリリースが進行中である。
「ゲルギエフは圧倒的な信頼を勝ち得ています。リハーサルの時には楽器の音色の組み合わせによるハーモニーの精練に、ほんとうに熱心に取り組んでいる。彼が作り上げるサウンドは、これまでにない個性をロンドン響にもたらしました」
そのゲルギエフが指揮してトラファルガー広場でオープンエアのコンサートを行うなど、クラシック音楽普及にも熱心だ。
「ロンドンの公立小学校を覗いてご覧なさい。そこでは英語以外に十カ国語以上の言葉が話されている。私たちの役割は、そこへ入って行って、音楽を通して文化の魅力を気づかせてあげること。こうしたプロジェクトには、すべての団員が関係しています。もちろんそこに次代の聴衆がいる訳ですからね」
今後もゲルギエフとのリリースが続き、さらにはCDだけでなく、iTunesとの連携も行なわれている。オーケストラ界をリードするLSOの活動には日本のオケも注目すべきだ。
『2013年ベルナルド・ハイティンク&ロンドン交響楽団 来日日程』
3/3(日)14:00 ザ・シンフォニーホール
3/7(木)19:00 サントリーホール
3/9(土)14:00 サントリーホール
3/10(日)(時間未定) 横浜みなとみらいホール ほか
※3月3、7、9日──ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス