インタビュー

朴 葵姫(パク・キュヒ)

真の音楽を奏でる韓国人ギタリスト

スペインの情熱を6本の弦で力強く奏でる『粉屋の踊り』で聴き手の心をガツンと掴み、その後に続く繊細な演奏で虜にする。アルバム『スペインの旅』を発表したパク・キュヒは、今年6月のアルハンブラ国際コンクールで1位および聴衆賞を受賞した韓国出身の26歳だ。

「アルハンブラでは緊張のあまり最終審査で演奏が止まってしまい、もうダメだと思いました。次の曲から純粋に演奏を楽しむことが出来たら、驚きの1位。審査員の方から『演技ではない、真の音楽を演奏していたから。演奏が止まったのは事故であって、力不足ではない』と褒めていただきました」

観客が投票する聴衆賞もパク・キュヒが断トツの1位だった。その彼女がギターを始めたのは日本。父親の赴任で3歳から日本に住み、母が通うギター教室で「ギターの音色に心穏やかになった」ことがきっかけとなり、5歳で帰国してからも練習を続けた。そして、15歳で再び来日する。

『スペインの旅』は、メジャー移籍第一弾。彼女が好きな作曲家5人の作品に取り組んでいる。

「より大勢の方に聴いてもらうためには親しみやすいテーマがいいと思ったのと、昨年スペインを旅することが続き、そこで触れた人々、文化、風景がインスピレーションとなり、今感じていることをこれらの名曲で演奏したいと強く思ったこと。その2点からスペインの名曲集になりました」
スペインの旅は、彼女がこれまでに培ってきた曲の解釈を確信へと導き、抱いてきたイメージがより明確になったことで、自信を持ってレコーディングに臨めた。その代表曲がアルベニスの《カタルーニャ奇想曲》になる。

「この曲のオリジナルは、ピアノ曲で、もっと早いテンポで演奏されます。私が抱く《カタルーニャ奇想曲》のイメージは、スペインの誰もいない砂浜に悠然と風が流れて、波も穏やかという風景だったので、ゆったりとしたテンポで演奏しようと思っていましたが、他とはあまりに解釈が違うので、本当に大丈夫だろうかという迷いが正直ありました。それが実際にスペインで風景を眺めるなかで間違っていなかったと確信できました」

現在はウィーン国立音楽大学で学びながら、日本とヨーロッパで活動。将来が楽しみな新星だが、彼女にとって「音楽は偉大な存在」。リスペクトの気持ちを演奏に込め、「観客にとって意味のある演奏をすること」が大きな課題。そして、韓国にクラシックギターを普及させることに情熱を燃やす。

LIVE INFORMATION
9/9(日)広島市文化交流会館(共演:広島交響楽団)
9/15(土)宗次ホール
9/18(火)エスプリ・フランセ(鵠沼)
9/28(金)兵庫県立芸術文化センター(共演:兵庫芸術文化センター管弦楽団)
9/29(土)和田山ジュピターホール(共演:同28日)
10/2(火)幸田町民会館
10/4(木)フィリアホール
10/6(土)HAKUJU HALL

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月17日 22:50

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 服部のり子