インタビュー

福間洸太朗

水と光の織り成す綾を紡ぐ音楽

ドイツを拠点に世界で活躍する福間洸太朗によるドビュッシーのニューアルバムとツアーのテーマは“水の光”。名前にある“洸”の字そのものである。

「最初は特に意識しませんでした。でも14歳のときに演奏後『名前にあるさんずいに光のイメージを受けました』と初めて言われたんです。その後海外で弾くと、漢字に意味があると知っている方に『水の光です』と説明すると、演奏にそのイメージがあった、と言われたり。そんなうちに“水の光”をテーマにプログラムをやりたいと思うようになりました。今年はドビュッシー生誕150年、個人的にも30歳という節目の年ですので、タイミングとしていいかな、と。コンセプトは水の光、水の世界ですが、水に関わる作品“だけ”のアルバムではなく、それが中核を成すプログラムですから、CDで旅をしているように楽しんで頂きたいです」

このアルバムで使われたのは1912年製造のスタインウェイである。

「楽器選定で『1912年に作られたもの』と言われたときは、『これで録音はないだろうな』と思ったんですよ(笑)。少しクセのある音なんですね。でも弾いていくうちに音色が豊かになって、心地よくてずっと弾いていたいと思ったんです。それでこれは面白い、と決めました。《沈める寺》はなによりペダリングが難しいですが、このピアノではとてもやりやすかった」

リサイタルツアー『水の光』では、ドビュッシー以外にも多彩な作曲家の作品が並び、世界初演が含まれる会場もある。

「テーマを独占するのではなく他のアーティストと共有したかったので、4人の作曲家に依頼し、うち2作を日本で弾きます。水と光は、それなくしては生きて行けないものです。この2つのエレメントが合わさったとき 幻想的で神秘的な現象に変わることに注目しています。この現象に感動を覚えて音楽を書いた人がこれほどいるのはすごいことですし、身近なこの2つの要素に幸せを感じてもらえたら嬉しいです」

今後はショパン、ブラームス、バルトーク、ベートーヴェンにフォーレなど、やりたいことだらけだそうだが、海外では別の録音企画が進行中。

「今回《7つの俳句》を書いて貰いましたが、別の作曲家の《12の俳句》も初演していますし、友人の日本人作曲家も《ピアノのための俳句》を書いていますので、これらを集めて俳句特集のアルバムを作るつもりです」

LIVE INFORMATION
9/16(日)ショパン国際フェスティバルinジャパン(軽井沢大賀ホール)
9/23(日)横浜みなとみらいホール
9/26(水)大宮ソニックホール
9/28(金)碧南芸術文化センター
10/7(日)大阪いずみホール
10/13(土)トッパンホール
10/19(金)北九州ホール
10/21(日)兵庫県立芸術文化センター
http://www.kotarofukuma.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月21日 15:25

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 川田朔也