インタビュー

サラ・ガザレク

撮影/山路ゆか  写真提供/COTTON CLUB

気がつくと、ブロッサム・ディアリーがそこに

チャーミングで利発なヴォーカリスト、サラ・ガザレクが5年ぶりとなるアルバム『花とミツバチ』を発表した。タイトルに“花”とあるが、それはブロッサム・ディアリーを指しているらしい。

「最近、ライヴが凄く良いって言われることが多いんだけど、考えてみたら、ライヴならでは興奮やユーモアなどをこれまでの作品ではきちんと捉えきれていなかったかもって思って。それを踏まえて選曲をしていたら、《ティー・フォー・ツー》や《アイム・オールド・ファッションド》とかディアリーの持ち歌が多いことに気付いたの」

サラが念を押していたのは、彼女から得たインスピレーションを元にしたことは事実だけど、決してトリビュート作品ではないってこと。「彼女はベン・フォールズの《ザ・ラッキエスト》を選んだりしないでしょ?」と笑ってそう話していたっけ。それにしても、《アンパック・ユア・アジェクティヴス》のカヴァーには笑わされた。

「日本で有名な曲なの?(笑) アメリカだと『スクールハウスロック』(米国の子供向け教育番組)のなかでは《フィギュア・エイト》のほうが有名なんだけど。今回初めてプロデュースしてもらっ たラリー・ゴールディングスはオルガン奏者としても有名で、彼と組むのならファンキーな曲をやりたくてこの曲を選んだ。彼は私にとって夢のプロデューサーね。いまの私が自信を持ってやりたいことがやれていると見抜き、手助けしてくれた」 そんな彼のアドバイスのひとつにジョン・ビザレリをゲストに呼ぶ案もあり、ふたりが息の合ったデュエットを聴かせる《花とミツバチ》といった素晴らしい成果に繋がっている。さておき、このインティメイトな感覚に溢れたサラの歌が良い。小粋なところも含めて、やはりブロッサム・ディアリーの世界を思い出さずにはいられない。

「彼女は歌詞でその曲の世界をしっかりと伝えることができる人。ジャズを始めた頃から、曲を自分の体験に照らし合わせてどんなふうにでも解釈して歌える“自由さ”が私は好きだったの。ボーイフレンドと喧嘩した日なら、そんな気持ちだからこそ表現できる歌があるし、翌日に仲直りしたら歌はまた違った感情を持つことになる。また、ジャズは年齢を重ねて含蓄を増す音楽だから歌詞で伝えることが大事になる。若い頃は頭でわかっていながらもなかなかそうできなかったけど、最近はだんだん上達してきたかな。これからももっと深めていければいいと思っているわ」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年09月18日 12:14

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 桑原シロー