インタビュー

桑原あい

21歳、等身大のピアニズム

新世代のジャズや上原ひろみトリオらに影響を受けていることが音から伝わってくる、注目の新人ジャズ・ピアニストが現れた。21歳の桑原あいだ。彼女のバックボーンを断片的に聞くことが出来たのでここに紹介したい。

雑誌で“天才”と紹介されたこともあるエレクトーン少女から、ジャズ・ピアニストへと転向したとか?

「エレクトーンは子供の頃からみっちりと。でもピアノへの憧れはずっとあったんです。小学校5年の時、エレクトーンで演奏するために、先生に《マッド・ハッター》を聴かせてもらって“ガーン!” ってなったチック・コリアさん、国際フォーラムで観て感動した上原ひろみさん、ミシェル・ペトルチアーニさんも、みんなピアニストですし。ジャズ/フュージョンに目覚めたきっかけはアンソニー・ジャクソン。《キャプテン・フィンガーズ》をすっごく速く弾いているのを先生に聴かされて、“何だコレは!” ってなって。それから練習しましたねえ、エレクトーンのペダルでベースを(笑)。でも中学生になって少し楽しめなくなってしまったんです。表現する場が欲しい、生で演りたいなって思ったんですね。それで、これはピアノに転向するしかない、と。最初は全く弾けなかった。でも、弦が鳴る感じ、わずかなタッチで全く音が変わる感触が楽しくてのめり込みました。高校の時はライヴはやらずに、ひたすら練習してましたね(笑)。練習は一生必要ですけどね(笑)」

高校卒業後、ジャズ・ピアニストとして初めてのライヴを行ってから2年。自主制作し、自らの手で販売していたのが『from here to there』。中学生の頃から、この新装盤の発売決定後までに書いたオリジナル曲で全編が構成されている。

「作曲もピアノと同じくらい大事なんです。曲を書く時は紙と鉛筆。アレンジも基本的には頭の中で鳴ってるものを、皆に演奏してもらっている感じですね。頭の中で全体像を描くんです。初めてライヴをやった時はコード譜じゃなくて何十ページもあるスコアを渡したんですよ(笑)。要領がわかんなくて(笑)。その後、コードネームとか書き方を森田(悠介)君にイチから教えてもらいました(笑)」

作曲も、表現も、気負いなく、でもマジメに、すごい集中力で、プレイする事を楽しんでいる。だからこそ、レベルがハンパないのだろう。今後が本当に楽しみな才能が出てきた。

LIVE INFORMATION

10/20(土)LAPIN ET HALOT(表参道)
10/30(火)月見ル君想フ(青山)『TOWER JAZZ FREE LIVE 2012』
※渋谷店、新宿店、秋葉原店、横浜モアーズ店、池袋店にてご購入の方に先着で招待券をプレゼント!
詳しくは→http://tower.jp/article/news/2012/09/04/n01

掲載: 2012年10月12日 15:07

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 押塚岳大(タワーレコード本社)