インタビュー

INTERVIEW(4)――日本人としての誇りだけは忘れずに



日本人としての誇りだけは忘れずに 



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――〈日本人らしさ〉という部分に関してはいかがですか?

上妻「僕は西洋の楽器にコンプレックスがあったから、いかにギターと並んで演奏できるかっていうのをやってきてたんですけど、それを経て、いまは自分のスタイルに西洋の楽器を招き入れていきたいと思ってます。ゆくゆくは海外のアーティストに〈日本に行ってアイツとプレイしたい〉と思わせられるような、もしくはそのきっかけとなるような音楽を作りたいなって。僕の時代では無理かもしれないけど、できる限り作っていきたいですね」

――沖さんは〈日本人らしさ〉について、どうお考えですか?

「正直、僕はいま2人の話を〈おもしろいなあ〉って思いながら聞いていました。僕は日本人でありながらフラメンコっていうスペインのものをやってる立場だから、自国のものをやってないぶん、ハンディがデカいなっていうのがあって、そこに日本人としての感性をどう入れて海外に持って行くかっていうのは、まだそんなに考えてないんです。ただ、やっぱりフラメンコは西洋のものじゃない感じはしますね。よくこういう言い方をするんですけど、スペインのアンダルシア地方で生まれたフラメンコは、ヨーロッパよりアジアに近くて、すごく東洋的な部分があるから、それが日本人を惹き付けてるって。実際に、日本はスペインの次にフラメンコが盛んな国なんです」

上妻「もともとインドの人が……」

「そう、インドの移民が流れ流れてスペインで……っていう説がいまいちばん有力で、ルーツはインドなんじゃないかって言われてるんです。〈間〉の話にしても、まさにフラメンコも〈ヨー、ハッ〉みたいな部分があるから、僕らに近いんだろうなって」

――初めて知りました。すごくおもしろいですね。

「ただね、結局はどこから来たかっていうのは問題じゃなくて、もちろん歌詞が日本語とか英語とかはあるけど、音楽自体にリージョン・コードが付いてるわけじゃない。どこに行っても聴けて、どこに行っても共通言語として楽しめるわけで、もっといろんな人を結び付ける音楽を作りたいなって思う。まあ、さっき上妻さんも言ってたように、俺も俺の代でそれができるかは正直わからない。それぐらい道のりは遠いけど、道筋は見えてて、方法も当ってて、〈こっちだ〉って確信を持って進んでる。それでも、いかんせん遠い」

上妻「プロセスはある程度踏んでいかなきゃいけないし、やるしかないんです。そのなかで時代に合ったり、協力者がいることでスピードが速くなることはあるかもしれないけど、時代を変えるとかっていうのは、ジャコ(・パストリアス)とかジミヘンみたいな人間じゃないと、ガラッとはいかないですよね。ただ、僕もプロでやってる以上、何となくこのへんまでできるんじゃないかってのりしろはあるんで、そこに邁進したいですね」

――ジャコやジミヘンと比べるのもなんですけど、でも雅-MIYAVI-さんが海外に行って、〈日本にこんなすげえやつがいるんだ〉って思わせることで、少しずつでも変化が起きていることは間違いないですよね。

上妻「ジャコみたいなもんですよ。時代を変えてますし、誇らしい」

「その2人と比べないとダメだし、比べるのがあたりまえって思わないとおかしいですよ。俺はいまいろんなところに行かせてもらってすごく幸せですけど、やっぱりまだ〈ジャパニーズ・アーティスト〉で、〈フロム・トーキョー〉なんですよね。マイケル・ジャクソンがどこから来たかとか関係ないじゃない? マドンナはマドンナ、エルヴィスはエルヴィス、プリンスはプリンス、どこの国の人かなんてみんな意識してないでしょう――でもホントはこういうことを話さなくていいような状況にしたいんだけど」

――確かに、そんな話をしてる時点で、まだそういう状況になってないってことですもんね。

「まあ、音楽は楽しむもんだからさ、こういうことばっかり固執してもしゃあないし、素晴らしいアーティスト、素晴らしい音楽、素晴らしいオーディエンス、素晴らしい未来を作るためにやってるだけなんだけど。ただ、〈日本人として〉っていう誇りだけは忘れずにいたいなって」



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掲載: 2012年11月14日 16:30

更新: 2012年11月14日 16:30

インタヴュー・文/金子厚武