AK-69 “THE SHOW MUST GO ON”
ニュー・シングルが告げる新たなショウの幕開けは、次なる章へのイントロダクションなのか……
今年3月にリリースされた第1弾先行シングル“SWAG IN DA BAG”を置き土産に、地元・名古屋を離れNYへと移り住んだAK-69。現地より届けられた第2弾シングル“SWAG WALK”は、日本で培った自信や誇りが彼の地でも通用しうることを実感し、その情景を綴った一曲だった。チャート順位など目に見える数字で言えば、過去のシングルを凌ぐ好結果を収めた“SWAG WALK”ではあったが、アメリカ人プロデューサーのキング・デヴィッドを起用した同曲はどちらかと言えば洋楽的で、中毒性はあれど明るさという部分に重点を置かない曲だっただけに、AKは「いままでのシングルにはなかった曲調だから、ちょっと心配だった」とそのリリースに際しては一抹の不安も抱いていたようだ。いままでのようにファンたちとライヴを介したコミュニケーションが取れる環境にないとあってはそれも無理はないだろう。
一方で、時を同じくして仕上げたという今回の第3弾シングル“THE SHOW MUST GO ON”は、〈AK-69節〉が全開となった一曲だ。彼の楽曲でも指折りのスマッシュ・ヒットとなった“Only God Can Judge Me”を筆頭に、キャリアの要となる楽曲たちを手掛けてきた同郷のプロデューサー、NATOのビートと融合した同曲を完成させたことで、AK本人としても「アルバムへの視界が開けた」という。この曲がそういったパワーを備えていると同時に、リリックに漲った自信もある意味で近い未来へ決意表明として受け取れるだろう。
併録の“メアリー 〜My Love Next Episode〜”は表題が示す通り、AKがシンガーのKalassy Nikoff名義で発表した初ソロ作『PAINT THE WORLD』から続く“MY LOVE”シリーズ最新作。このメロウな楽曲では、SIMONやAKLOらのプロデュースでも知られるJIGGが辣腕を奮っている。その物語自体はアルバム『THE CARTEL FROM STREETS』(2009年)でひとたび終焉を迎えていただけに、ファンにとっては嬉しいサプライズと言えそうだ。
そんな今作に関してAKが強調していたのは、「あくまでシングル・カット」だということ。海外武者修行で遂げた進化も含めて彼がいま表現したいすべては、「本当に納得いくモノが出来た」と自信を窺わせる新作アルバムに詰まっているそうだ。ただ、来年1月に控えるそのリリースまでは、今作にこそもっともアップデートされたAKが焼き付けられているというのもまた事実。ハイ・アヴェレージで続いていくAK-69の進化、その一端を感じてほしい。
▼関連盤を紹介。
左から、NATOの2010年作『13 BEATS TO DIE』(STREET OFFICIAL)、JIGGが参加したAKLOの2012年作『THE PACKAGE』(ONE YEAR WAR)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2012年11月19日 17:15
更新: 2012年11月19日 17:15
ソース: bounce 350号(2012年11月25日発行)
インタヴュー・文/吉橋和宏