チャリート
元が良ければ、厚化粧しなくてもいいでしょ(笑)
チャリートの『アフェア・トゥ・リメンバー』は、アレンジャー兼キーボード奏者の野力奏一とがっちり手を組んだプロジェクト。2人のコラボレーションは、 チャリートのデビュー盤『This Girl』(90年)以来のことになる。
「私にとって野力さんは信頼できる音楽仲間の一人で、いつかまた一緒にアルバムを作りたいと思っていました。彼は、アレンジャーとして日本人離れしていると言ってもいいほどの才人で、とにかく音楽的視野が広い。だから尊敬しています」
『アフェア・トゥ・リメンバー』は、スタンダード主体のバラード・アルバム。しかもジョン・コルトレーンの名作『バラード(Ballads)』同様、《セイ・イット》で幕を開ける。
「私も野力さんも、すっかり大人になったので、今だったらバラードのアルバムを作っていいかなと思った。『セイ・イット』はとあるジャズ・クラブの閉店時に必ずかかる曲ということもあって、昔から親しんできましたけど、歌ったのは今回が初めて。実は、この曲を録音している歌手はあまりいないんですよね」
《スマイル》《ザ・ヴェリー・ソート・オブ・ユー》《慕情》などのスタンダードの中に、《ラヴ・ビウェア》といった耳馴染みのない曲が混じっている。作者はマリテス・サリエンテス。チャリートと同じく、フィリピン人の女性だ。
「私はここ数年、マニラで開催されているジャズ・フェスティヴァルに出演しているんですけど、2年くらい前に一人の女性が私のために書いたという曲を持って楽屋を訪ねて来たんです。私の歌を聴いて感動したからって。その曲を聴いてみたら、予想以上に素晴らしくて。マリテスはもともとミュージシャンで、いったんはビジネスの世界に身を転じて成功したんですけど、現在はまた音楽の世界で活躍しています。私は今年、“東京-マニラ・ジャズ&アーツ・フェスティバル”の委員長をやらせてもらいましたけど、ジャズを通してフィリピンと日本の架け橋になれればいいなと思っています」
このように『アフェア・トゥ・リメンバー』は、チャリート個人の様々なストーリーやアフェアが織り込まれたアルバム。“3・11”の体験も反映されているという。音楽的に特筆すべき点は、あたかも本物のオーケストラのようなシンセサイザー・サウンド。ただし、豪奢ではなく、あくまで瀟洒、それでいて芳醇な香りを漂わせたサウンドだ。
「そうね、ゴージャスだけど、シンプル。余計なものは一切ない。女性と同じで、元が良ければ、厚化粧しなくても、いいでしょ(笑)」
LIVE INFORMATION
『アルバム発売記念ライブ』
12/21(金)Body&Soul(南青山)
12/22(土)12/23(日)Jazz inn LOVELY(名古屋)
2/6(水)STB139(六本木)