LUNKHEAD 『ENTRANCE 2 BEST OF LUNKHEAD 2008〜2012』
[ interview ]
昨年2月に発表した最新アルバム『青に染まる白』のリリース・ツアーの終了後、約8か月間に渡って沈黙を守っていたLUNKHEADが、2枚目のベスト・アルバム『ENTRANCE 2 BEST OF LUNKHEAD 2008〜2012』をもってふたたび動き出す。
最初のベスト盤『ENTRANCE 〜BEST OF LUNKHEAD age18-27〜』以降にリリースされた2008年作『孵化』、2009年作『ATOM』、2010年のミニ・アルバム『VOX』、2011年作『[vivo]』、2012年作『青に染まる白』のなかからメンバー自身がピックアップした19曲をリマスタリングし、時系列で収めた本作。その〈楽曲によるバンド年表〉からは、高いプレイヤビリティーを持つ4人だからこその表現力の進化はもちろん、〈生きるということ〉をがむしゃらに追究してきた彼らのメンタリティーの遷移も赤裸々に感じ取ることができる。
ファースト・ミニ・アルバム『影と煙草と僕と青』から10年。6月9日にはその記念碑的なワンマン・ライヴ〈影と煙草と僕とAX〉も決定し、次のアルバムの構想もすでに見えてきている様子のフロントマン・小高芳太朗(ヴォーカル/ギター)に、個々で課外活動を行っていたこの数か月と今後の展望について話を訊いた。
全体を通してこそLUNKHEAD
——2012年の2月に発表されたオリジナル・アルバム『青に染まる白』のインタヴューのときに〈LUNKHEADというバンドをホームにしていろんなことがやれたらいい〉とおっしゃってましたが、実際、リリース・ツアー以降は個々の活動に移られて。LUNKHEADとしての動きをキッパリと止めたのは、何か意図があってのことだったんですか?
「最初は〈俺ら突っ走りすぎるよなー〉って話をしてて。ほとんど1年に1枚のペースでアルバムを出してきてたんで、アルバム出してツアーして、また制作に入ってアルバム出してツアーして……みたいな。ファンもたぶん、〈ツアー・ファイナルで次のアクションを発表するんだろ?〉って……みんな、そこらへんは慣れちゃってて先が読めすぎちゃう。その流れを1回変えてみようっていうのが始まりですね。で、〈どうせ空けるんだったら1年ぐらい空けなきゃ意味ないんじゃない?〉って言ったのは(昨年8月に)死んじゃった事務所の社長のボビーなんですけど」
——戦略家でいらっしゃいましたからね。
「それで次の打ち合わせのときに年間スケジュールみたいなものを渡されたんですけど、矢印でガーッと〈ライヴなし!〉って書かれてて(笑)。こんなにライヴをやらないことってなかったんで、みんなに忘れられてしまうんじゃないかって俺らも怯えながら、〈ほんまに大丈夫か? これ……〉って感じでしたね。そこをあえてやってみようよって」
——そこからギターの山下(壮)さんはHermann H.& The Pacemakers、ベースの合田(悟)さんはHeavenstamp、ドラムスの桜井(雄一)さんはART-SCHOOLなど、それぞれがサポート活動で各地に飛んでいらっしゃいましたし、小高さんはソロ・アルバムのリリースとライヴ活動があって。それでようやくLUNKHEADとしての次のステップ――ベスト盤『ENTRANCE 2 BEST OF LUNKHEAD 2008〜2012』が到着したわけですが、選曲はメンバー全員、ほとんど同じだったようですね。
「ああ、全然揉めなかったですね。ビックリするぐらいいっしょで。〈アルバム1枚から3~4曲ずつかね?〉っていう話はしてたんですけど、あとはライヴでよくやってる曲っていう基準で」
——全19曲、改めて聴き返してみて何か思うところはありました?
「自分たちの音源を聴き直すことってあんまりないから、マスタリングが終わって、データが届いて、それを最初から聴いてみたらちょっと感慨深いというか、〈あっ、格好良いじゃないか!〉と思いました(笑)。あとは……やっぱりひとつ芯が通ってるなって。去年の夏ぐらいに、俺と、壮と、ボビーと3人で悟がサポートをやってるHeavenstampのライヴを観に行ったあと、焼き肉を食いに行ったんですね。そこで3人で〈ベストを出す〉って話をして、さらに〈じゃあベストを出したあとのオリジナル・アルバムはどんなふうにしようか?〉っていう話になったんですよ。その流れで、これまで出してきたLUNKHEADのアルバムのなかで、どれがいちばん〈これがLUNKHEADだ!〉って言えるアルバムか?っていうのを挙げてみたら、全員が『ATOM』だったんですよね」
——現在のFlyingStarにビクター内で移籍する直前のアルバムですね。
「そう。『ENTRANCE ~BEST OF LUNKHEAD age18-27~』っていう1枚目のベスト盤があって、その次に『孵化』っていうアルバムがあるんですけど、そこではすごいダークサイドに寄ったっていうか、それまでのだんだん開けてきていた雰囲気をもう捨てたんですね。LUNKHEADはそうじゃない、そうなりたくないって俺は思ってて、『孵化』のカラーはその反動だったんですけど、そうした尖った部分を飲み込んだうえで、カーン!って開けたのが『ATOM』だったんです。でも、そのあとで(前ドラマーの石川)龍が辞めて桜井さんになったときに、またストイック・モードに入って。それで出来たのが『[vivo]』なんですけど、そのアルバムはすごい重くなって、そっから次の『青に染まる白』でまたちょっと開けて……そうしたなかで、いちばん奔放だったのは『ATOM』かなあっていう話をしてて。そういう俺らのメンタルの上がったり下がったりっていうのは、こうしてベスト盤として時系列に沿って聴くと、すごいわかるなって思いましたね(笑)。そういう意味で、このベスト盤は全体通してホントにLUNKHEADだなっていう、バランスのいいアルバムになってるなって感じました。前の〈ENTRANCE〉のほうは、ああいうこともやってみよう、こういうこともやってみようっていう初期のバンドの手当たり次第な感じがあったと思うんですけど、いろんな浮き沈みがあるなかでも、〈LUNKHEADはじゃあ、どういうバンドになっていきたいんだ?〉っていうのが、このベスト盤の芯になってるなって」
——思考が空転する様を延々とまくし立てる“ぐるぐる”のようなエッジーな楽曲もあれば、ジェントルなコーラスを配した“サイダー”といったセンシティヴなポップ・チューンもあって。ちなみに“ぐるぐる”は私の思う小高さん像だったりするんですが(笑)。
「あっ、そうですか(笑)? 曲的にはわりと飛び道具ですけどね。ライヴでは異様に盛り上がる曲です。LUNKHEADのお客さんってダイヴとかしないけど……俺がダイヴしますからね(笑)」
——(笑)表現に振り幅はありつつ、どの楽曲を取ってもLUNKHEADだとわかるのは、いまおっしゃった『ATOM』に顕著な芯ありきだからなんでしょうね。ちなみに今作に収録されている曲のなかで、これがターニングポイントだったと思えるような楽曲はありますか?
「なんだろう? やっぱり“ぐるぐる”かなあ(笑)? いくつもありますけどね。“ぐるぐる”と、あと個人的には“ラブ・ソング”っていう曲は子供のことを歌詞にしてて、そこからわりと歌詞が変わってきたんでそれがターニングポイントかな?っていうのもあるけど、さらにそこから“果てしなく白に近づきたい青”で自分個人のパーソナルな世界にまた戻ってきたんで、歌詞で言うとそこかな?」
——“ラブ・ソング”は、やはりお子さんのことを歌われた“echo”を含むのちのミニ・アルバム『VOX』に広がる音世界の一部が垣間見えている歌詞ですよね。そこから次の『[vivo]』ではまた壮大になって、生命そのものというか……。
「うんうん」
——ただ、いずれにしても〈生きる〉ということをずっと書かれていて。LUNKHEADは、それがミクロになったりマクロになったりの揺り戻しのなかで進んできているように思います。
「そうですね。そういうふうに考えるとターニングポイントは“果てしなく白に近づきたい青”かな? それか“明日”(2曲とも『青に染まる白』初出)かな? “明日”のほうが先に出来たんで。『[vivo]』を作ってたときから、この達観した感じはこのアルバムでしか書けないだろうなって思ってたんですけど、『[vivo]』が出来てじきに“明日”っていう曲を書いて、で、『[vivo]』のツアーでずっとやってて。だから“明日”かな? ターニングポイントは。このベスト盤のなかでは最近の曲ですけどね(笑)。ああ俺、またこういう言葉が書けたんだな、書いていいんだな、ってホッとしたっていうか。『[vivo]』であそこまで世界が広がっといて、またヒュンって自分の身の回りだけになって。それでいいんだ、みたいな」
——地に足のついた感じというか。
「うんうんうん、そうですね」