インタビュー

capsule 『rewind BEST-1 2012→2006』『rewind BEST-2 2005→2001』



改めての〈デビュー〉に向け、ユニットの12年を〈リワインド〉するベスト盤が登場!



Capsule_A



capsule初のオールタイム・ベスト・アルバムがリリースされた。サウンドの変遷を巻き戻しで辿れる構成、そしてもちろん選曲も中田ヤスタカ本人によるもの。

capsuleのデビューは2001年に遡る。サウンド・クリエイター、中田ヤスタカがヴォーカルのこしじまとしこを起用して始まったその歩みも早12年。その間には中田のプロデュースによるPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの大ブレイクもあり、いまや彼は時代を切り拓く人物だ。その中田はcapsuleのことを〈実験工房〉と例え、また〈いま何がキャッチーなのかを提示していく機能〉とも言う。音楽実験の側面を根底に持ちながらのポップ・ミュージック——今回のベスト盤はその変遷史でもある。

「選曲に関しては1枚もののシングル集をはじめ、さまざまな案があったんです。逆に3枚組で1セットという案もあったり。でもしっくりこなくて、丁度いいのが巻き戻しかなあと。capsuleはやっぱり最新が最高だと自分も思ってるので。選曲基準は自分っぽいもの。オリジナル・アルバムのなかには〈実はこんな曲もある〉みたいな、試したものもあるんですけど、今回は自分で消化してるなと感じた曲で構成しています。その時のひらめきだけで終わってない曲」。

capsuleのサウンドは、初作『ハイカラ・ガール』でのエレポップ、2作目『CUTIE CINEMA REPLAY』から『NEXUS-2060』までのラウンジ・ポップ期、そこから次のモードへの移行期『L.D.K. Lounge Designers Killer』を挿んで、『FRUITS CLiPPER』から『MORE! MORE! MORE!』あたりのエレクトロ期、そして作家指向も強まった『PLAYER』以降と変化しているが、中田はザックリこう語る。

「音楽の変化はずっとリンクしてるので、自分のなかでは区切れないんですよ。漫画とかでも長く続いていると、最初の巻と最新巻を見ると絵も全然違ってたりするんですけど、最初からずーっと見てるから、ファンタジーだった漫画が途中からバトル漫画になっていても気付かないみたいな(笑)。その感じに近い。ただ、部屋で流す音楽から現場感のある音楽に変化したとは思います。バンドで言えばライヴで盛り上がる曲というか。でもやっぱりcapsuleはリスニングで成立させたい部分もありますね」。

プロデューサーらしく自身の音楽に対しても客観性を持ってきた中田だが、10年以上の活動とさまざまな経験を経たうえでの今回のベスト盤に関して、その客観的な視点はより強まっているようだ。そこには意外にもきゃりーぱみゅぱみゅからの還元があったそう。

「初期の曲とか、もう自分の曲じゃないくらいまで客観的に見てるんですよ。実はきゃりーの影響は結構あるんです。あの〈デビューしてる感じ〉を見て、〈デビューって良いなあ〉って。次のcapsuleのオリジナル作では、もう1回〈デビュー〉しようかなと思って(笑)。いま、自分自身がちょっとフレッシュになりたいんです」。

これまでベスト盤に対しては必ずしも積極的ではなかった彼が今回の企画に踏み込んだ背景には、次のcapsuleに向けた気持ちのリセットもあるようだ。

 

『rewind BEST-1 2012→2006』 contemode

最新作『STEREO WORXXX』〜2006年作『FRUITS CLiPPER』までの楽曲を遡って収録。〈ダンサブル〉という軸以外はノー・ルールなここ数作のモードから、フィジェット・ハウス〜フレンチ・エレクトロ路線と、時代ごとのトレンドに沿いつつも、そこに留まらない独自色を発揮したもの揃い。

 

『rewind BEST-2 2005→2001』 contemode

2005年作『L.D.K. Lounge Designers Killer』〜初作『ハイカラガール』までの楽曲を遡って収録。後にPerfumeらへ受け継がれたガーリーなエレポップから、〈ポスト・ピチカート〉とも呼ばれたフレンチタッチだったりボッサ風味の初期へ——“music controller”はシングル・ヴァージョンを収録。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年04月17日 12:30

更新: 2013年04月17日 12:30

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

インタヴュー・文/MMMatsumoto