「アウトレイジ ビヨンド」 新井浩文インタビュー
男たちが血を流し、吠える! 北野武監督のバイオレンス・エンターテイメント完結編「アウトレイジ ビヨンド」には、前作以上の怒号が吹き荒れている。その弱肉強食の闘いに今回初めて参戦したのは、今や日本映画に欠かせない個性派俳優、新井浩文。北野組からオファーがあったと聞いて、脚本を読まずに出演を決めたという新井に、映画について話を訊いた。
北野映画の暴力は観ていて痛くなるし、生々しい。ウチはそういう映画が好きなんです。
―今回は桐谷健太さんと2人組のチンピラ役ですね。
「同世代の役者のなかでは迫力ある2人だと思うんですけど、この映画のメンツのなかだとマスコットみたいなもんですよ(笑)。どうやったってほかの皆さんには勝てない。それはまあ、仕方ないので、とりあえずマックスのテンションでぶつかることにしました」
―桐谷さんとのコンビの息はあっていましたね。すぐ相手に噛み付く桐谷さんと、黙って後ろで控えている新井さん、みたいな。
「別に2人で相談したわけじゃないですけどね。ウチは脚本に書いていることしかやらないたちなんですけど、桐谷君はバッティングセンターのシーンとかではガツガツいってました。本番で急にビンタしたりして、こっちは〈お、いくな〉って隣でドキドキしてました」
―これまでにないほど緊張されていたとのことですが、その理由は北野監督ですか?
「はっきり言ってそうです。以前、「血と骨」でご一緒させて頂いたんですけど、たけしさんの息子役だったんです。その時にすごく緊張したのを覚えていて。でも、緊張感は嫌いじゃないんですよ。だから、その緊張感がまた味わえると思うと、それ以上の緊張感が襲ってきて(笑)、テストの段階でセリフが飛んだりしてました。もちろん、本番の時は切り替えますけどね。これでも10年やってきてるし、本番でビビっててもしかたない。呼ばれたら、それに応えないといけないとわかってるから」
―自分が出演しているシーンで、気に入っているシーンはありますか?
「2カ所あります。(親分の木村に)〈親分、俺たちにやらせてください!〉って言うところと、敵の組に捕まってペッて血を吐くところ。あれ、観ていても良かったです。今回、ウチの影のテーマで、〈バカ野郎〉と〈この野郎〉は絶対セリフで言おうと思ってて(笑)。台本にはなかったんですけど、そのシーンで両方入れることができました」
―たけしさんに対する影のオマージュですね(笑)。では最後に、新井さんから見た北野作品の魅力を教えてください。
「まず暴力描写です。アクション系の暴力って〈カッコいい〉って感じのほうが強いんですけど、北野映画の暴力は観ていて痛くなる。あと、間ですね。人間臭くて自然な間。黙って突っ立ってたり」
―痛みも間も生々しいですよね。
「そう、生々しい。ウチはそういう映画が好きなんです」
■PROFILE…新井 浩文(あらい ひろふみ)
1979年、青森県出身。2003年、「青い春」で第17回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。独特の存在感と確かな演技力で、日本映画を支える実力派俳優。
記事内容:TOWER+ 2013/4/10号より掲載