インタビュー

裏方出身の大物シンガーたち、その現在と未来



ニーヨやドリーム、ライアン・レスリー、ケリ・ヒルソンのような特例もあるとはいえ、ショウビズ特有の事情やらフォーマットの要請やらいろんな事情が絡むせいで、特にUSのアーバン業界では才能あるアーティストであろうと契約やデビューまで至れない例が本当に多くなっている(ジョンテイ・オースティンもエスター・ディーンも結局アルバムは出せないままだ)。そのため本国のメジャー・シーンではソングライター/プロデューサーといった裏方として才覚を発揮していても、シンガーとしては自主盤やミックステープのみ、というケースが頻出してくるわけだ(というか、曲を自作していることが妙に重視されるのは日本ぐらいじゃないか)。

そんな状況を受けて日本独自にフックアップされ、リスナーの賞賛を勝ち取ってきたのがタージやリル・エディだ。メジャー・アーティストとしてのキャリアが先行していたラティーフのような例も含めれば、世界的なヒットに関与してきたロニー・ビリアルやオーガストをはじめ、最近のデヴィオン・ファリスに至るまで、R&B/アーバン・ポップの分野で名を馳せる超大物ソングライターたちの日本デビューという流れは、ニーヨ系のブームが落ち着いてからも途絶えることはない。それでも継続して作品を出せるのは一握りの存在なわけで、タージなどはまさに楽曲自体のパワーで評価されていると言っていいだろう。ソングライターとしての実績を無視したところで評価されてこそ本物なのではないか。



▼関連盤を紹介。

左から、ラティーフの2013年作『IV Love』(Manhattan/LEXINGTON)、ロニー・ビリアルの2012年作『The Love Train』(Notifi/URBAN LINX)、ドンテ・ピープスの2012年作『Decisions』(BBQ)、アルヴィン・ギャレットの2013年作『Expose Yourself』(Pヴァイン)、オーガストの2012年作『Music Of My Life』(Manhattan/LEXINGTON)、デヴィオン・ファリスの2013年作『Davion Farris』(ユニバーサル)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年05月15日 18:00

更新: 2013年05月15日 18:00

ソース: bounce 355号(2013年5月25日発行)

文/轟ひろみ

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