INTERVIEW(2)―憧れますね、CD屋さん
憧れますね、CD屋さん
タイジ「曲を書き出したのはいつやったん?」
詩織「中学の軽音部を引退してからなので、中学を卒業する頃です」
タイジ「きっかけは何?」
詩織「単純に……その日すごくイヤなことがあって」
タイジ「ムカついてたんや」
詩織「はい。家に帰ったら、いつもは一日あったことを全部親に話すんですけど、その日に限って家に誰もいなくって。でも、かなり溜まってたので、とにかく吐き出したくって、それで言いたいことを全部紙に書き出そうと。それでギターで何となく思いついたコードを乗せて歌ったのが、“だからさ”(デビュー前の昨年12月~期間限定で、メールマガジンの登録メンバーに直筆サイン&宛名入でCDプレゼントされた)っていう曲で」
タイジ「えっ、それが世に出ちゃったの?……あっ、そう!」
詩織「それまで、軽音部ではコピーをやってただけだったので、自分で曲を作るっていう意識はまったくなくて、絶対できないと思ってたんですけど、たまたまやってみたらできちゃって」
タイジ「詞が先だったのかぁ。てっきりギターからだと思ってた。そっかあ、じゃあ、いっぱい本読んで、いっぱい音楽聴いて……」
詩織「最近、好きなアーティストが好んで聴いてる音楽もちゃんと聴いてからそのアーティストを好きって言いたい、っていうのがあって」
タイジ「正しい聴き方だね。良いミュージシャンは良いリスナーでもなくちゃいけないから。何だったら、CD屋でバイトしたらいいよ(笑)。俺も19から25歳ぐらいまでレコード屋でバイトしてて、学校行かなくなっちゃって大学はクビになっちゃったけど(笑)、レコード屋が大学みたいなものだったな。ものすごく聴く範囲が広がったし、いろんなものが見えてくるんだよね。それは自分のキャリアのなかで大事な期間だったなって思うんだよ」
詩織「楽しそう」
タイジ「たぶん、変装して働いてれば大丈夫だと思うよ(笑)」
詩織「男装とかして」
タイジ「うん、それだとたぶん違う方向に行くかもよ(笑)」
詩織「(笑)。でも、憧れますね、CD屋さん。新しいCDを置いてあるお店も憧れますけど、中古屋さんもいいですね」
タイジ「レコードとかも聴いたり買ったりするの?」
詩織「聴きますね」
タイジ「音楽業界の宝だな、新山は」
詩織「こういう話を普通にすると、ホント? って目で見られるんですけど」
タイジ「うん、珍しいよ」
詩織「自分ではあたりまえなんですけどね」
タイジ「純粋だね、純粋に音楽と接してる。レコードがあってCDがあって、今はデータになっててさ、それって進化のようで、決して音が良くなったっていうことではないわけじゃん? レコーディングの技術にしても、ぜんぜん歌えてないのに歌えるようにできちゃったりとかさ、売る側が音楽好きなのかどうかわかんなくなってるけど、新山が素晴らしいのは、純粋に音楽と接してるところだと思うからさ、ちゃんと音楽ができる、良い音で出せる環境を大人たちが守ってあげなきゃいけないと思うね。ホントもう、スクスク育ってほしいんだよ。スクスク自由に育ってほしいし、しょうもないストレスは抱えてほしくないし、ええ音でリリースしてあげたい」
―レコードの音イイなあって、やっぱり思います?
詩織「そうですね。初めて聴いたときに、あきらかに違う、根っこから音が入ってくるなって。そこでハマッちゃったから、抜け出せない」
タイジ「でも、そういう話をして、新山が珍しい人ってなっちゃうのは、音楽業界の努力不足だよなあ。最近、どんなの買ってんの?」
詩織「最近、チバユウスケさんが聴いてたものをひたすらチェックしてるんですけど、このあいだジ・ヘッドコーツっていうイギリスのガレージ・バンドをようやく手に入れて」
―〈ガレージ〉という言葉が女子高校生から出てくるとは(笑)。
タイジ「イイじゃないですかあ。イイよねえ、将来が楽しみすぎる。だってさ、あと10年やっても27歳でしょ?」
詩織「そうですね。あと3年でやっと20歳になれます」
タイジ「楽しいこといっぱい待ってるなぁ」
詩織「20歳になったら、友達とひたすら音楽を語り合うのが夢で。お酒飲んだら絶対凄く喋るようになって、何だか人が変わりそうな気がします……」
タイジ「20歳すぎて新山のキャラがどうなっていくかも興味深いところだなあ。やらかしてしまった日とかも出てくるんやろうし(笑)。オレなんてさ、いまだにやらかしてるからね。酒を覚えて何十年経ってもぜんぜん成長してない自分を思い知るときもあるよ(笑)。でもまあ、当面はギターソロ覚えることな。いやもう、夏までの宿題!……って、いつも出されるほうなんだけどな、俺は」
詩織「えっ、どんな宿題を出されるんですか?」
タイジ「何だろう……売れる曲を書けとか(笑)。でも、新山にはまだそういう宿題は出さなくていいと思う。それはまあ、みんなが抱える宿題だからね。ミュージシャンとしての質を上げるっていうのがまずはテーマじゃないかな。とにかく吸収力がいいから、テンション上げてってほしい。まあ、17歳の子とセッションするのなんて初めてだったし、興味深かったし、おもしろかったよ。ちゃんとしてるものを持っているから、まあ、いずれおっきな壁にブチ当たる時期も来ると思うんだけど、そこでやめないでほしいし、ずっとライブしていくっていう姿勢、結局それがロックだと思うんだよ。どこでもいいからとにかく演奏し続けること、結局そこだと思うから」
詩織「はい、わかりました!」
■Single……“Don't Cry”……7/10 on sale!!
1.Don't Cry
※映画「絶叫学級」主題歌
※ポッキーチョコレート スペースシャワーTVバージョン CFソング
2.ありったけの愛
3.Don't Cry -instrumental-
■Profile…新山詩織(にいやま しおり)
1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に<詩織>名義で出場。オリジナル曲“だからさ”と椎名林檎“丸の内サディスティック”を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月17日にはサウンドプロデューサーに笹路正徳を迎えたメジャー1stシングル“ゆれるユレル”をリリースした。同年7月10日、映画「絶叫学級」の主題歌として書き下ろした2ndシングル“Don't Cry”を発表。
■Profile…THEATRE BROOK(シアターブルック)
1986年に佐藤タイジ(Vo,Gt)が結成、95年メジャーデビュー。95年に中條卓
(Ba)、96年にエマーソン北村(Key)、97年に沼澤尚(Dr)が参加、様々な遍歴を
経て、日本屈指のメンバー4人を擁したバンドとなる。2012年12月には代表曲である
“ありったけの愛”のセルフカバーを収録した『最近の革命』というオリジナルアル
バムを2年半ぶりにリリース。そして、復活後の目標でもあった武道館ライブをソー
ラーの電気だけで行う企画<THE SOLAR BUDOKAN>を成功させた。
記事内容:TOWER+ 2013/7/10号より掲載
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