インタビュー

映画 「鈴木先生」 脚本家・古沢良太

 

tower-midashi11-4



[ interview ]

 人気コミックを原作にして話題を呼んだTVドラマ「鈴木先生」が映画化。今回も計算と妄想で頭がいっぱいの鈴木先生と個性豊かな生徒達が活躍するなか、原作のエピソードを巧みに融合させた脚本を手掛けたのは、「ALWAYS 三丁目の夕日」や「相棒」シリーズなど数々のヒット作を手掛けてきた古沢良太だ。DVDリリースを記念して、脚本家の視線から映画「鈴木先生」の魅力を語ってもらった。



観ている人がワクワクするような流れにする。それが脚本を書くうえで一番大切で難しい。



―古沢さんはTV版の脚本も手掛けられていましたが、映画化するにあたって気をつけたことはありましたか?

「映画化というと、物語をスケールアップする、今回なら学校から外に飛び出す話にする、というやり方もあるんですが、「鈴木先生」の場合は外の世界で起きていることを、教室のなかに集約しているのが面白さなんですよね。だから、あまりスケールアップし過ぎると原作の良さが損なわれるので、そのバランスが難しかったです」

―原作の二つのエピソード、<生徒会選挙>と<立てこもり事件>を選んだ理由は?

「原作のどのエピソードを取り上げようかと考えていた時、生徒会選挙で反乱を起こす子達と立てこもり事件の犯人に通じるものが見えてきたんです」

―頭ごなしに規制する社会への反発ですね。そういう硬派なテーマが、映画ではサスペンスフルに描かれていました。物語を構成していくうえで心掛けたことはありますか?

「ワクワクするような流れにすること、それが脚本を書くうえで一番大切で難しいことなんです。見ている人を飽きさせないように、どんどんフックを作って引っ張っていく。そういうミステリーっぽい手法は原作でも使われていて、原作の持ち味のひとつだと思います」



suzukimain2



―古沢さんから見て、武富健治さんの原作コミックの魅力はどんなところですか?

「鈴木先生は情熱で生徒にぶつかっていったりはせずに、狡猾に計算して生徒達を良い方向に導こうとする。この計算高さが新しい教師像として魅力的ですね。しかも、計算してもうまくいかないことが多い(笑)。我々自身もそういうことってありますからね。それに不良じゃなくて、普通の生徒に向き合おうとするところも良いですよね。不良と格闘するほうがドラマチックでしょうけど、実際には不良でも優等生でもない子供たちのほうが多いわけだから」

―そういう点では、これまでの熱血教師ものとは対極のドラマですよね。ちなみに古沢さんは、どんな中学生だったんですか?

「すごくひねくれていて、自意識を持て余しているイヤなガキでした(笑)。別に悪さをしたり先生に逆らったりはしないけど、まわりをバカにしていた。ただ、絵を描いたり文章を書いたりするのは好きでした」

―そういう中学時代の経験が、「鈴木先生」の脚本に反映されているのかもしれないですね。最後に、原作があるものを脚本化する難しさはありましたか?

「まあ、人の子を預かっているようなものなので(笑)、傷つけちゃいけない。それに、やっぱり原作者には喜んでほしいと思っていて。今回、武富先生がこの映画を気に入ってくれたと聞いて、それはすごく嬉しかったです」



suzukimain1






■PROFILE…古沢良太(こさわ りょうた)

1973年神奈川県厚木市生まれ。東海大学文学部在学中にシナリオ学校に通い始め、27歳でテレビ局が主催する「新人シナリオコンクール」で大賞を受賞し脚本家へ。2005年、「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。その後も「探偵はBARにいる」、「鈴木先生」など数多くのヒット作を手掛けている。<今、最も忙しい脚本家>である。




tower011-mini

記事内容:TOWER+ 2013/7/10号より掲載

■Blu-ray&DVD……「映画 鈴木先生」 now on sale!!


<豪華版>※Blu-ray&DVD共通

【オーディオ・コメンタリー】

・「映画鈴木先生の舞台裏」~ここは喫煙室!?グレーゾーンの中年たち大いに語る~」武富健治(原作)、河合勇人(監督)、山鹿達也(プロデューサー)、守屋圭一郎(プロデューサー/司会)

【特典映像…合計160分以上】

◎公開記念スペシャル・ドラマ「鈴木先生の結婚報告」~待望の休暇も心の汗が止まらないッ!~(約60分) ◎メイキング「鈴木学級のつくりかた」完全版(約33分) ◎未公開シーン集(約16分) ◎イベント映像集(約24分)… 完成披露舞台挨拶&初日舞台挨拶  (長谷川、臼田、土屋、風間、富田、原作武富氏、河合監督)、公開セミナー(長谷川、河合監督、脚本古沢氏、山鹿P) ◎土屋太鳳・北村匠海・未来穂香・西井幸人による座談会(約16分) ◎生徒全員コメント(約11分)  ◎特報・予告・TVスポット(約4分)(本編ディスクに収録)

※公開記念スペシャル・ドラマは2013年1月1日に放送された同タイトルを再編集して収録しております。

【特典CD…全21曲】

・「映画鈴木先生」オリジナル・サウンドトラック(音楽:大友良英) (※注)主題歌“Rainbows”、挿入歌“光射す方へ”、“僕が僕であるために”は収録されません。

【封入特典】

・ビジュアルブック28P(原作・武富健治描き下ろしイラスト付) □縮刷台本64P(完成版シナリオ/撮影資料/美術設定)(脚本:古沢良太)

<通常版>

【特典映像】

・特報・予告・TVスポット(本編ディスクに収録)

※通常版はDVDのみです。ブルーレイの通常版はございません。

タワーオリジナル特典:先着で“生写真2枚組み”(※全タイプ共通です)
絵柄はこちらになります。

カテゴリ : Premier Seat

掲載: 2013年07月09日 18:00

ソース: 2013/7/10

TEXT:村尾泰郎