インタビュー

上野星矢

新世代、個性溢れるフルート奏者は超高速で進化している!  

新世代の大型フルート奏者として活躍する上野星矢。昨年10月に発表したデビュー盤に続く第2弾が早くもリリースされることになった。前作は《熊蜂の飛行》や《カルメン幻想曲》などを集めた超絶技巧名曲集だったが、今作では近現代音楽の力強さと洗練を追求。また、前作同様、ジャケットのデザインにも力を注いでおり、漆黒の背景に金髪姿の印象的なアップ写真。タイトルの下には髪色と同じ金色に輝くフルートが横たわっている。

そんな当盤のハイライトが、「近代フルートの最も重要な作品」と上野が語るプーランクのソナタと、ドビュッシー《シランクス》、そして表題作の吉松隆《デジタルバード組曲》だという。

「デビュー盤が名曲集だったので、今回はその発展編という感じで。フランス音楽は昔から僕のレパートリーの中核をなしていますが、中でも、様々な感情と対話が作品の随所に散りばめられたプーランクのソナタは最も大切な作品です。《シランクス》は単旋律作品にも関わらず、調性が無調すれすれまで拡張しながらフルートの音色を徹底的に突き詰めているのがドビュッシーならでは。《デジタルバード組曲》は、2年前に日本コロムビアのスタッフの方々にライヴで聴いていただき、僕がデビューするきっかけになった作品でもあります。アコースティック楽器のフルートとピアノが掛け合うことによって、鳥のさえずりに例えられることが多いフルートのデジタル化を実現しているのがすばらしいですね。第1楽章冒頭のユニゾンや、最終楽章の変奏曲(テーマを何度繰り返してもよいという設定により、エフェクターのような演奏効果が生まれる)などは、その顕著な成功例だと思います」

当盤のもうひとつの聴きどころが、京都出身で、パリで活躍する邦人作曲家、上林裕子の書き下ろし新作《クリスタルの時》だ。

「08年にランパル国際コンクールで優勝した僕の演奏を気に入っていただき、そのイメージを音楽にしてくださいました。緩-急-緩の3部構成で、満天の星空のような音色が隅々まで繊細かつ精妙にきらめいているのが魅力ですね」

11月に28日にはHAKUJU HALLでCD発売記念リサイタルを開催。《デジタルバード組曲》や《クリスタルの時》のほか、CD収録曲以外に、プーランク《エディット・ピアフに捧ぐ》のような隠れた名曲や、上野が「究極のソナタ」と敬愛してやまないJ.S.バッハのロ短調のソナタ(BWV.1030)なども披露する。また、今後はソロだけでなくオーケストラでの活動も視野に入れているというから、さらなる進化と深化が楽しみだ!

LIVE  INFORMATION
『上野星矢 フルートリサイタル』

11/28(木) 19:00開演 会場:HAKUJU HALL
『クリスマス♪バロック名曲コンサート』
12/13(金) 19:00開演 会場:サントリーホール・ブルーローズ
http://www.mori-music.com/seiya.html

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年08月21日 13:34

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview&text:渡辺謙太郎(音楽ジャーナリスト)