ヒラオコジョー・ザ・グループサウンズ 『B.C.Eのコンポジション』
ロックンロールを知らない子ども達が探り当てた答えは、BとCとEの素敵すぎる関係。いよいよ全国進出に向けて瑞々しい挨拶を響かせるこの5人組は、平成のグループサウンズなのか? あるいは……
グラスゴー、もしくはウッドストック系を思い出させる朴訥とした、しかし熱量の高いバンド・アンサンブルと人懐っこいメロディーを響かせる5人組、ヒラオコジョー・ザ・グループサウンズ(通称:ヒラオコ)。すべての詞曲を手掛けているのは、ヴォーカル/ギターのヒラオコジョー。実を言うとその名前は本名でなく、地元の兵庫県赤穂市では歴史研究家として名の知れた彼の祖父、平尾孤城から拝借したもの。このたび初の全国流通盤としてリリースされたミニ・アルバム『B.C.Eのコンポジション』のジャケットに写っているのがそのお方である。
「お祖父さんは、僕が通っていた小学校と中学校の校歌を作詞していて。中高生の頃は兄貴の影響でビートルズやローリング・ストーンズのような古い洋楽も聴きつつ、ラウドなロック、それこそジャケに〈PARENTAL ADVISORY〉って付いてるものを狙って買ってたりしてたんですけど(笑)、その一方でお祖父さんのようにみんなから親しまれる詩人とか歌うたいになりたいなあって思ってたんですよね」(ヒラオ)。
そして……姫路でそれぞれ異なる音楽性のバンドを組んでいたヒラオとコウチケンゴ(ドラムス)、ハラオモイ(ベース)が意気投合し、次々と上京。地元でヒラオのライヴに足繁く通い、進学でひと足先に上京していたタナカケンスケ(ギター)と、サークルでタナカと知り合ったスナヅカケイ(キーボード)が加わり、ヒラオコは2009年春にスタートを切った。
「戯れ言って思われるかも知れないですけど、ヒラオくんの書く曲はメンバーもみんな大好きで……」(タナカ)。
「昨日とかこいつ(スナヅカ)からメールが来て、〈“神様の宿題”、マジで最高だ〉って。まあ、僕も最高だと思って書いてるから〈何なん?〉って返したら、〈聴いてて急に泣けてきた〉って(笑)。なんか、ファンで構成されてるんですよね、このバンド」(ヒラオ)。
つまりはその、ソングライティングを一手に担うヒラオだけが舵取りをしているワンマン・バンドではなく、ソング・オリエンテッドな音楽性に向かって、メンバーが一丸となって心地良い響きを探り当てていく、そんなふうな感じとでも言おうか。
「1曲目の“ロックンロールを知らない子ども達”なんかは結構前に作った曲なんですけど、当初のデモは4つ打ちでアコギとかシンセが入ってる、アナログとデジタルを混ぜ合わせた音作りだったんですね。たぶん、ひとりでやり続けていたらそのままの感じになってたんだろうなって。でも、バンドをやっていくうちに、これが正解なんだなってこととか、バンドじゃないと成し得ない音とか、みんなが気付かせてくれるんですよ」(ヒラオ)。
「10年先に自分らの音楽を聴いても〈良い音楽を作ったな〉って思いたいので、やってる音楽のジャンルがどうこうっていうより、メンバーが共有できる〈良い音楽〉っていう部分を探し当てたい——そういった形で出来ていったのが自分たちのサウンド、このアルバムなのかなって思いますね」(スナヅカ)。
まさにB(ビート)、C(コード)、E(アンサンブル)の絶妙なコンポジションによって心揺さぶる歌を生み出していく彼らだが、最後に、将来の展望としてこんなことを語ってくれた。
「僕、どんどん夏が好きになってるんですよ。今年も暦が9月になった瞬間に泣くんちゃうかなって思ったぐらいで。それでまあ、入道雲みたいな存在になりたいなって。何があるわけではないですけど、入道雲を遠くから見てるだけですごくソワソワ、ワクワク、なんか始まるんちゃうかなって気持ちになるんですよね。そういう気持ち、僕らの音楽を聴いて感じてもらえたらなあって」(ヒラオ)。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2013年10月24日 17:45
更新: 2013年10月24日 17:45
ソース: bounce 359号(2013年9月25日発行)
インタヴュー・文/久保田泰平