インタビュー

Emily Bear

触れるものすべてを音楽へ。クインシーも驚く11才の天才的閃き。

仕草や話し方は小学生のそれと変わりないのに、ここから行く先が計り知れない。「学ぶことはたくさんあって、それをやめることはないわ。クインシーが言うには、これはキミが学校へ通うのと同じで毎日続けなければならないことなんだって」。8月30日で12才になるピアニストのエミリー・ベアーは、米音楽界のドン=クインシー・ジョーンズのプロデュースを得て5月に『ダイヴァーシティ』でメジャー・デビュー。今回は、そのクインシーに同行しての来日であった。

「7時半に起きて9時に学校へ行って、帰ってくると宿題を済ませてからピアノの練習に取りかかるの。ぜんぜん嫌だと思わないわ。というのもやり方が特殊でジャズとクラシックを同じだけ演奏するんだけど、絶対そこで何か閃くものがあって、そのアイディアを次は作曲に傾けるわけ。1日に何曲も出来てしまって、どれをアルバムに採用しようか迷ってしまうぐらい」

週末になると友達と湖へ遊びに行き、お菓子を焼いたりアクセサリー作りを楽しむ。話す顔は幼さを残すが、経歴を眺めると一変して存在は水際だってくる。2才でピアノを弾き、3才で作曲を手がけ、5才でラヴィニア音楽祭へ出演しクラシックとジャズと自作曲を披露。6才の時にホワイトハウスへ招かれ、ASCAPからアルバム冒頭の《ノーザン・ライツ》で新進作曲家賞を授かったのも同じ頃。オーケストラとの初共演は7才で、110人の楽隊と220人の合唱隊とカーネギーホールで共演した翌年の2011年にはクインシー・ファミリーと歴史あるモントルー・ジャズ祭やペララーダ城音楽祭に出演。1万人を超すハリウッドボウルの大観衆を前に堂々と自作曲もメドレー・プレイしていた。

「大きな時計会社が主催するチャリティ・コンサートに出演したんだけど、そこの社長がクインシーに会った時に私のことを推してくれたの。すぐクインシーのお宅へ招かれ、何時間も一緒にお喋りしたわ。凄く幸せなひと時で、そこで私もファミリーに加えてもらっていたのね。会いに行く飛行機の中でも興奮して曲が出来たんだけど、それが今回収録した《Q》よ」

抱く感情を瞬時に音へ翻訳できる才能があり、舞い踊る雪を見ながら、訪れた地の文化に触れて、優しかった老人の死に接し……どの曲もファンタジックな映像を伴い、すでに何作か映画音楽を手がけていることも得心できる。最後に尋ねたフェイヴァリットを、早口言葉にして返してきた。「いくわよ。チック・コリア、オスカー・ピーターソン、A. C. ジョビン、ガーシュウィン、ランディ・ニューマン、ハリーポッターのジョン・ウィリアムスじゃないほうの作曲家、ピクサー映画のマイケル・ジアッチーノ、それからドビュッシーも!」

掲載: 2013年09月06日 13:25

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview&text:長門竜也