インタビュー

ゲスの極み乙女。 『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』



ゲスの極み乙女_A



ギター/ヴォーカルを担当するMC.Kを中心に結成されたゲスの極み乙女。。〈ダンサブルであること〉が基本にありながら、予測不能な展開を見せるプログレッシヴな演奏に、ラップとキャッチーなメロディーを使い分けるヴォーカル、さらにはまるで劇団のように個性的な4人のキャラクターが話題となり、今年3月に初のミニ・アルバム『ドレスの脱ぎ方』を発表すると、瞬く間にブレイクへの道を歩みはじめた。コンセプト先行のようにも見える彼ら、そもそもはノリで始めたバンドだという。

「バンド名はちゃんMARIが持ってたトートバッグに書いてあったのをそのままつけただけだし、ファーストは何も考えずに2日間で録音したものなんです。でもレコ発をやったとき、その日は雨が相当降ってて〈お客さんは5人ぐらいかな〉と思ってたらパンパンに入ってて、メンバーみんなで〈何なんだこれ?〉と思って。それで〈これはちゃんとやらないと怒られるんじゃないか?〉って、そこからいろいろ考えるようになりました」(MC.K:以下同)。

スタートこそカジュアルだったものの、メンバー全員がイエスやアレアが好きだという曲者揃い。特に、休日課長は父親がプログレのサイトを運営しているという、その筋のサラブレッドだ。また、ほな・いこかは、ジミー・イート・ワールドやskillkillsが好きだという男前っぷりで、ちゃんMARIは萌え担当かと思いきや、絶対音感を持つ天才肌で、オーケストラのアレンジもできるというから驚き。こんな濃いメンバーを擁しながら、新作『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』でもあくまでポップで踊れる曲調にこだわるのは、いまの日本のシーンに対するフラストレーションの裏返しのようだ。

「いまの日本のバンド・シーンって、安易な4つ打ちが多いと思うんですよね。それがダサいということを、あえて4つ打ちで示したいと思って。海外ではフォスター・ザ・ピープルとかトゥー・ドア・シネマ・クラブとかがガーッと売れましたけど、ああいうものはカッコイイと思うんです。別に洋楽志向とかではないんですけど、日本は〈これが売れてるとかあり得ないな〉って思うものが個人的には結構あって。だから、そこに対するカウンターみたいな意識はあります」。

タイトルからして皮肉を感じさせる“キラーボール”は、昨今耳にする音圧で押すタイプの4つ打ちではなく、ベースとドラムのコンビネーションによるしなやかなグルーヴのなか、途中で急にショパンの一節が挿入されるという何とも〈らしい〉一曲。また、“スレッドダンス”はピアノをメインとしたジャジーでエレガントな仕上がりになっている。

「僕はこれからの10作品ぐらいを念頭に置いてて、段階を踏んで音楽性を変化させていくつもりなんですけど、今回はピアノを押してみようと思って。ジャズっぽい感じの4つ打ちって、インストとかだとたくさんあるけど、ポップで歌のあるバンドだとあんまりいないと思ったんですよね」。

キャラクター勝負と思える要素もあるものの、実際は相当の批評性を持ったバンドであることは間違いない。2枚目の作品にして本格的なギアを入れたこの4人、果たしてこれからどこへ向かい、10作目にはどんな作品を発表しているのだろう?

「〈難解なプログレだからアンダーグラウンド〉とかではなく、もっと(チャートのど真ん中に位置する)J-Pop的というか、ポップ・アイコンみたいな感じになれればと思っていて。10作目はもういまの輪郭はなくなっていて、それこそオーケストラが入ってるかもしれないし、いこかとちゃんMARIだけ前に出て、俺と課長は曲だけ作ってるかもしれないし、それかアイドルみたいになってるかもしれない(笑)。いくら振り切れたことをやっても許される、そういう状況まで持っていきたいですね」。



PROFILE/ゲスの極み乙女。


indigo la Endのフロントマンである川谷絵音=MC.K(ヴォーカル/ギター)を中心に、それぞれが別プロジェクトやサポート・メンバーとしても活動する休日課長(ベース)、ちゃんMARI(キーボード)、ほな・いこか(ドラムス)から成る4人組。2012年5月に結成。限定店舗でリリースされたデモCD『乙女の日常.ep』が話題を呼び、2013年3月に初の全国流通盤として発表したファースト・ミニ・アルバム『ドレスの脱ぎ方』はロング・セールスを記録。夏には〈SWEET LOVE SHOWER 2013〉に出演し、年末にも大型フェスへの参加が決定するなど注目度が高まるなか、ニュー・ミニ・アルバム『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』(gesukiwa)を12月4日にリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年12月11日 17:59

更新: 2013年12月11日 17:59

ソース: bounce 361号(2013年11月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武