67~74年のアメリカ西海岸ではどんな音が鳴っていた?
Arisa Safuが愛する67年から74年のアメリカ西海岸ロック。まず言っておきたいのは、この時代は〈ロックの黄金期〉と呼ばれているということだ。反抗期の男子/女子にウケまくったロックンロールが精神性や思想性を重んじる〈ロック〉へと深化し、〈サマー・オブ・ラヴ〉の季節を謳歌するフラワー・チルドレンたちに支持されたのが67年。それから音楽ビジネスが巨大化し、シンセサイザーの進歩に伴ってキーボード主体の洗練されたロックが幅を利かせはじめる70年代半ばまでのこの期間は、ちょうど西海岸ロックの黄金時代とも重なる。アメリカ産のロックが世界的に絶大な影響力を誇っていた時代、この地域は音楽好きにとって地上の天国のような場所だったのだ。
そんな夢のウェストコーストから、60年代後半にはヒッピーから絶大な支持を得たジャニス・ジョプリンやグレイトフル・デッド、そしてブルースやフォーク、カントリーなどのルーツ・ミュージック見直し運動の代表的なバンドだったクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルをはじめ、ロック表現の幅を広げることに寄与したアーティストが数多く登場する。清涼感を醸すナチュラルなアコースティック・サウンドや、カラッと乾いた豪快なギター・サウンドはウェストコースト・ロックの代名詞と言えるものだが、例えばArisa Safuが『Hotel California』(76年)を〈心の一枚〉とするイーグルスとドゥービー・ブラザーズも、かの地のロックの醍醐味を堪能させてくれる重要グループだ。
また、アーリー70sと言えばシンガー・ソングライター・ブームが起きたことも記憶されるが、そのなかで多くの名曲を発表したジャクソン・ブラウンは〈ウェストコースト・ロックの良心〉と言われている。これらロック史に燦然と名を刻むビッグネームが当時に残した作品から聴こえてくるのは、ライヴ感満点で飾り気がなく、ヒューマン・タッチなサウンド。『Chasing The American Dream』でArisa Safuが追い求めた理想の響きがここにある。
▼関連盤を紹介。
左から、ジャニス・ジョプリンの70年作『Pearl』(Columbia)、グレイトフル・デッドの67年作『The Grateful Dead』(Warner Bros.)、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの70年作『Pendulum』(Fantasy)、イーグルスの76年作『Hotel California』、ジャクソン・ブラウンの74年作『Late For The Sky』(共にAsylum)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2014年01月23日 16:20
更新: 2014年01月23日 16:20
ソース: bounce 362号(2013年12月25日発行)
文/桑原シロー