インタビュー

sugar me 『Why White Y?』



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sugar meは寺岡歩美が2012年にスタートさせたソロ・プロジェクト。もしかしたら、彼女がユメオチというバンドにヴォーカルとして参加していたことを覚えている人がいるかもしれないが、それ以前からシンガー・ソングライターとして活動していた。つまり、寺岡にとってsugar meは新たなスタートであると同時に、原点を見つめ直す試みでもあったのだ。

「シンガー・ソングライターとして活動をしていた時に、自分のやりたいことが見えなくなってきて。そんな時にユメオチに誘ってもらったんです。でも、気持ち的にはシンガー・ソングライターを続けているつもりでした。今回、sugar meをスタートするにあたっては、もう一度、歌を歌うことについて考えて、これまで書いた曲も全部チャラにして、いちから曲を作っていったんです」。

シンガー・ソングライターと言えば弾き語り——そんなイメージに疑問を持っていた彼女は、〈自分がやりたいこと〉をじっくりと考えた。そんな寺岡をサポートしたのが、原田知世や伊藤ゴローなどの作品に参加してきたmilkこと梅林太郎だ。

「〈自分がゼロの状態から何ができるんだろう?〉ということを、梅林さんがいっしょに考えてくれたんです。気がついたらアルバムが完成するまで2年の月日が経っていたんですけど、梅林さんとはいろいろ話をして、曲も4曲書いていただきました」。

梅林以外にも、小山田圭吾やイトケン、千住宗臣など、腕利きミュージシャンたちが彼女の才能に惚れ込んで参加。ヴァラエティー豊かな楽曲が並んでいる。そんな今回のアルバムで寺岡がめざした音、それは〈毒っ気のあるポップス〉だ。

「ひと癖あるけど耳触りはポップな曲が好きなんです。例えばジョン・ブライオン。彼がプロデュースしたフィオナ・アップルのアルバムとかが大好きで、今回の作品にはそういうイメージも入っています」。

ジョン・ブライオン的なサウンドと言えば、収録曲の“as you grow”はまさにそんな雰囲気だ。メロトロンのノスタルジックな音色と美しいメロディーは、後期ビートルズを思わせたりもする。

「もともとビートルズ・ライクな音はすごく好きなんですよ。今回はいろんな楽器を入れたくて、わがままを言って本物のメロトロンを入れてもらったんです。私は弾けないんですけど、音を聴いて、〈いいなあ、欲しいなあ〉って思っちゃいました(笑)」。

また、アルバムの隠し味となっているのがフレンチ・テイスト。セルジュ・ゲンスブール曲をカヴァーした“couleur cafe”のほか、milkが作曲を手掛けたシャンソン風の“monsieur le demon”もフランス語で歌われている。

「フレンチ・ポップは前からよく聴いていて、梅林さんがフレンチっぽい毒もいいんじゃないかって、この曲を書いてくれたんです。でも、フランス語で歌詞を書くように言われて、〈マジですか!?〉って頭を抱えながらもがんばって歌詞を書きました(笑)」。

思えば本作は英語とフランス語で歌われていて、日本語詞の曲はない。そのことについて、寺岡はこう説明してくれた。

「以前は日本語オンリーだったんですけど、いまやりたいサウンドに合っているのが英語やフランス語の響きなんです。いまはあまり言葉(歌詞)でいろいろ説明したくないというか。音楽自体がひとつのメッセージであればいいなと思っているんですよね」。

ちなみに、アーティスト名に〈sugar〉という言葉を入れたのは、「いまの真っ白な自分の状態」を砂糖の白さで表したかったからだとか。「声のイメージも音楽のイメージも、いまは白なんです」と語る彼女。雪のように純白の本作を出発点にして、これからsugar meがどんな色を見つけ出していくのか楽しみだ。



PROFILE/sugar me


寺岡歩美のソロ・プロジェクト。2010年よりシンガー・ソングライターとしての活動を開始。2011年にヴォーカリストとしてユメオチに参加。それと並行して2012年からsugar meでの活動をスタートさせる。同年、milk(梅林太郎)のソロ作『greeting for the sleeping seeds』に参加。2013年に入って、イッツ・ア・ミュージカル『Summer Breaks EP』に、“Take Off Your T-Shirts”のカヴァーを提供。同年夏から本格的にライヴを行うように。9月にはミシェル・ゴンドリー監督映画「ムード・インディゴ 〜うたかたの日々〜」の公式イメージ・ソング“1, 2, 3”を店舗限定でシングル・カットする。このたびファースト・アルバム『Why White Y?』(Rallye)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2014年01月24日 19:20

更新: 2014年01月24日 19:20

ソース: bounce 362号(2013年12月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎