インタビュー

すぎやまこういち



すぎやまこういち_A



すぎやまこういちの斬新な編曲で魅力を再確認

色あせないビートルズの音楽。その魅力を弦楽四重奏曲として再現したのがアルバム『弦楽四重奏によるYesterday』だ。編曲はすぎやまこういち。1971年に編曲が行われたが、なぜその時代に編曲を考えたのだろうか?

「ビートルズの出現は、それまでのポップ・ミュージックの歴史を塗り替えるものでした。アメリカのポップ・ミュージック一辺倒だった60年代に、ヨーロッパの音楽の歴史を感じさせるビートルズの音楽が登場してきた。音楽的な面で考えると、アメリカの音楽というのは、ディキシーランド・ジャズからスウィング・ジャズの時代になり、次第にモダン・ジャズなどに変化していく。その過程で起ったのは、7th、9th、11th、というような和音の縦の積み重ねによる発展だったのですね。ところがビートルズの音楽には、ヨーロッパのクラシック音楽の豊かな遺産が感じられた。特にベースラインの進行が実に豊かで、面白い。アメリカ音楽が縦の和声の発展なら、ビートルズの魅力は横の流れとその発展のさせ方。それはまさにクラシック音楽が持っている魅力でもあり、これは弦楽四重奏曲に編曲したら面白いだろうと思ったのです」

と、すぎやまは語る。1971年と言えば、日本の年間ヒットチャートを振り返ると《私の城下町》《知床旅情》《また逢う日まで》などが上位。その時代に、ビートルズの楽曲を斬新な弦楽四重奏曲に編曲するというのは、かなり時代を先取りしたアイディアだった。

「弦楽四重奏というのはクラシック音楽の基礎なんですよね。聞くところによれば、パリのコンセルヴァトワールで作曲を学ぶと、ひたすら弦楽四重奏曲を書かされるそうです。それを通して基本的な作曲技法を学ぶ。4つの声部があり、それを自由に操れれば、どんな複雑な交響曲も書けるようになるということなのでしょう。そこでビートルズを編曲する時に、メロディ+和声的な伴奏、という形だけでなく、新たに作曲した前奏部をつけ、内声部を担当する楽器にもちょっと複雑な動きを担当してもらうなど、いろいろな工夫をしています」

例えば《フール・オン・ザ・ヒル》。その前奏部はちょっとフランス印象派の作品を思わせるような、きらめきと浮遊感を持った音楽になっている。原曲の魅力もさることながら、新たな魅力を持つ作品として、この弦楽四重奏版を楽しむことが出来るだろう。

「編曲作品としてはあまり知られていないようなので、今回の再リリースを通して、特に弦楽四重奏に取り組んでいる人たちに知って欲しいですね。演奏会のアンコールとしてもオススメしたいです」



LIVE INFORMATION


『バッハからドラゴンクエストまで TMBQ×すぎやまこういち』
○2014/3/19(金)京都コンサートホール(アンサンブルホールムラタ)

『バレエ「ドラゴン・クエスト」全2幕』
○2014/2/15(土)16(日)ゆうぽうとホール(五反田)

『すぎやまこういちのドラゴンクエストvsワーグナーのニーベルングの指輪』
○2014/2/7(金)東京芸術劇場コンサートホール
http://sugimania.com



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年12月18日 11:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview&text:片桐卓也