インタビュー

大橋祐子



y_ohashi_A



美しいジャズ・バラードは物語とともに

2010年のデビュー以来、ジャズピアニストとして順調にキャリアを重ねる寺島レコード・大橋祐子トリオの3rdアルバム『TWO CHORDS』が、クリスマスに発売される。「今回はバラードを中心としたスタンダードナンバーが多く、美しいメロディをロマンティックに繊細に、ゆったりと弾くことを意識しました」

子どもの頃からピアノが大好きだった。「友だちがピアノを習っているのが羨ましくて仕方なくて…親に懇願して自分も習わせてもらったんです。最初はクラシックを弾いていたのですが、同時に習っていたエレクトーンの影響か、だんだん譜面通りに弾くクラシックよりもジャズ、フュージョン、ポップスを演奏するのが楽しくなってきてしまって(笑)」

まるで英会話を学ぶかのように、ジャズを学んだという。「まずは英単語を覚えてそれを組み合わせて会話にしていくように、ビル・エヴァンスやウィントン・ケリー、オスカー・ピーターソン、ハービー・ハンコックなどいろんな人の音楽を聴いてジャズらしいフレーズを覚えて、それをどんどん組み合わせて音楽にする、という感じ。あとは北欧のラーシュ・ヤンソン。彼のやさしい包み込むような音楽を聴いたら“こんなふうに弾きたい!”って。プロになりたいと本気で思うようになったきっかけでした」

曲を作るのも大好き。衝動的に即興的に作るのではなく、ピアノと遊びながら思い浮かんだ情景や物語を題材にメロディを紡ぎだしていくのだそうだ。「初めてのオリジナル・バラード《Tomorrow》は、自分の帰れる場所、原点…Homeというテーマ。3作目のアルバムなので自分自身をもう一度見つめ直してみたいな、という想いを込めて作りました」

1stから毎回収録されているオリジナル曲《Waltz》のシリーズはもっとユニークだ。「舞台は古いヨーロッパ。ロミオとジュリエットのような結ばれない王子様とお姫様が主人公の物語です。二人が運命的に出会って手を取り合って踊るシーンをイメージしたのが1stアルバムに入っている《Waltz part1》。《Waltz part2》は、お姫様がダンスパーティーの翌日、お城のバルコニーで空を見上げながら王子様を想っているというシーンがモチーフ。そして今回の《Waltz part3》はそこから1〜2年後のお話で、もう王子様とは結ばれないと悟ったお姫様が、親から勧められるがまま幼なじみと結婚して、どこか王子に心を残したまま穏やかな家庭を築いているという展開。じつは4部作で考えているので続きあるのですが、それはまた次回のお楽しみということで(笑)

まだやりたいことだらけらしい。





カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年12月25日 10:00

ソース: intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)

interview&text:久世恵美