インタビュー

小林沙羅



小林沙羅の“今”を“花”で表現した意欲作

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期待のソプラノ歌手・小林沙羅のデビューアルバムがリリースされる。『花のしらべ』と題されたアルバムには世界の様々な花にまつわる歌が集められた。

「初めての単独の録音なので、現在の自分を表現したものにしたいと思いました。もともと言葉に関心が深く、日本語もドイツ語もイタリア語も大事に歌って行きたいという想いがありました。同時に“花”というキーワードには、花言葉など様々な広がりもあります。そういうことから花をテーマにした歌を集めて、このアルバムが出来ました」

シューベルト《野ばら》、モーツァルト《すみれ》という有名歌曲に始まり、シューマン、R・シュトラウス、そして日本歌曲の数々。

「有名な歌曲から、あまり知られていないものまで、でも、自分の声に合う作品を選びました。R・シュトラウスの『乙女の花』(全4曲)はとても可憐な作品ですが、意外に録音も少なく、あまり知られていないかもしれないと思い、選曲しました。ヨーゼフ・マルクスの作品も日本ではあまり知られていないと思いますが、これはウィーンで付いている歌の先生が『君にぴったりの作品だから』と推薦してくれた作品です」

そう。小林は現在ウィーン在住で、ウィーンを拠点に日本とヨーロッパで活躍している。

「本格的に歌手を目指したのは高校2年生の時でした。人前で表現をすることが子供の頃から好きで、進路に悩んでいた時に、高校の先生が声楽を学ぶという道もあることを教えてくれたのです。それまではオペラとかクラシックの歌曲はほとんど知らなくて、学び始めた頃は戸惑いもかなりありました」

子供の頃から詩が好きで、家にある詩集を片っ端から声に出して読むということが好きだった。実家の近くには劇団があり、その公演によく通った。10歳の頃、坂東玉三郎の演劇塾『東京コンセルヴァトリー』の特別聴講生となり、日本舞踊も学ぶ。

「その頃から表現者になりたいという想いが強かったですね。それは今も変わっていません。オペラを学ぶようになっても、詩の朗読と音楽のコラボレーションである〈VOICE SPACE〉の活動に参加しています」

今回のアルバムには自作曲も収録されているが。

「ちょうどこのアルバムの選曲をしている時に、風邪をひいて、1週間ほど外に出られず、誰とも会話出来ない時期がありました。その鬱屈した想いを書いていたら、いつの間にか曲が出来ていたのです。それをディレクターさんに聴かせたら、じゃ、それも入れようということになりました」

素晴らしい声と意欲の持ち主のアルバム。きっと多くの人の心に花を咲かせてくれるだろう。



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年03月05日 10:00

ソース: intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)

interview&text:片桐卓也