インタビュー

Edmar Castaneda



ジャズに魅せられ、新たなジャズを拓く鬼才

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Photo by Shinya Watanabe

アルパという楽器をご存じだろうか。中南米で多く使われているハープでクラシックのハープより小型で、弦も少なく、ペダルなども無いシンプルな構造。しかし素朴な外見とは裏腹に華やかな響きを聴かせてくれる楽器だ。

先日来日したコロンビアのアルパ奏者、エドマール・カスタネーダは、このアルパでジャズを奏でるプレイヤーだ。ただジャズのメロディをなぞるだけなら誰でもできるが、エドマールのスタイルは独特だ。それも低音部と高音部につけたマイクでそれぞれ独自の音作りを施し、演奏では絶妙に南米のリズムやスタイルのエッセンスを混ぜ込んでくる。ここからは実際に聴いてもらうべきだが、ともかく恐ろしいほどアグレッシヴになアルパが迫ってくる。こういった場合、伝統を守るべき立場だったが、そこから抜け出そうとして試行錯誤した、というパターンがよくあるのだけれど、エドマールからは面白い答えが返ってきた。

「僕の家は音楽と全く縁が無くてね。だけど7歳の頃に地元(コロンビア、ボゴタ生まれ)でホローポ(コロンビアからベネスエラにかけて伝わる伝統リズム)のダンスを習ったんだ」

この体験が彼のスタイルをつくり上げたようだ。そして転機は16歳で移り住んだニューヨークにあったようだ。

「父親の仕事の都合でNYに移ったんだ。既にアルパは演奏していたけど、ジャズに魅せられてトランペットも習ったんだ。ビッグバンドでトランペットを吹いたりもしていたんだけれど、レストランでアルパを弾く仕事もしていたね。やがてジャム・セッションに参加するようになって、キューバのトレス奏者、ネルソン・ゴンサレスに出会ったんだ」

そして噂が噂を呼び、ジャズの海を渡るアルパ・プレイヤーとして知られるようになるが、そのアルパのテクニックはほとんど独学だという。

「NYで毎晩演奏していたレストランでは、リクエストが来ると何でも弾いていたんだ。だからそこが一番の学校かな。賄い付きのね(笑)」  

結果として伝統に囚われず、しかし充分なリスペクトを持つことがエドマールの音楽を作り出す原点だと思うが、彼の場合は強い好奇心の持ち主であることも忘れてはいけないだろう。話の中で日本の箏に触れると、エドマールは身を乗り出してきた。

「箏にはすごく興味がある。世界中にあるハープの類を集めてコンサートをしてみたいね。」

コロンビア=NYの融合で生まれた新たなアルパに世界が注目しているといってもいいだろう。



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2014年03月07日 12:00

ソース: intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)

interview&text:渡部晋也