m-flo 『FUTURE IS WOW』
常にエッジーでポップでフューチャリスティックなサウンド世界を提案してきたm-floが、1年ぶりに届けてくれたさらに新しい未来——豪華なゲスト陣と繰り広げる楽しい空間は、過去最大にWOW!な驚きで満ち溢れている!!
VERBALと☆Takuから成るプロデュース・ユニット、m-flo。インターナショナルスクールの同級生だった両名で98年に活動をスタートし、日本の音楽シーンを牽引する名曲を次々と発表。個別の活動にも力を注ぎながら、共にさまざまな分野で才能を発揮し続けてきた。2012年に〈原点回帰〉を掲げた『SQUARE ONE』を発表してからは、改めてエネルギッシュな作品リリースやライヴ活動を展開。そして2013年の『NEVEN』からほぼ1年という快調なペースで、オリジナル作としては通算8枚目となる進化型アルバム『FUTURE IS WOW』が届けられた。
言葉の枠を超えた楽しさ
ダンス・ミュージックの最前線と呼応する近年のスタンスを継承しつつ、今回の『FUTURE IS WOW』ではよりフォーカスを絞り込んだサウンドを提示。トランシーでメロディックなEDMを軸にした多彩な楽曲が、m-floらしいポップセンスとフューチャリスティックな意匠でパッケージングされている。
「以前はいちラッパーとして作品に向き合っていたんですけど、ここ数年で自分も頻繁にDJをするようになって、フロア向けの曲が作りたくなったという経緯がまずあって。そのうえでEDMはm-floらしいキャッチーな感覚があるし、現場でかけることも多いんです。言葉の枠を超えた楽しさが伝えやすいなと」(VERBAL:以下同)。
過去2作ではゲストの名をあえて伏せたことも話題を呼んだが、今回はそのラインナップを公開。リード・トラックとなったエモーショナルな“Go Crazy”にはBIGBANGのSOLが、レイヴィーな昂揚感の漲る“Young & Restless”にはアマンダ・ワーナーを擁するNYのユニット=MNDRが、アコギの叙情性とハードなビートを融合した“FLY”には[Champagne]の川上洋平が、ダブステップ気味のトラックがドラムンベースへとチェンジする“Show You More”には盟友マット・キャブが……といった具合に、国内外の多彩なヴォーカリストを迎えている。
「m-floはアイデアのおもしろさを求められていることもあってゲストの名前を伏せてみたんですけど、企画としては未来的すぎてあまり理解してもらえなかったかなと(笑)。そういう反省もあったし、せっかく素晴らしい人たちに参加してもらえているんだから、という思いもあって今回は名前を出しました。SOL君は昔からの友達なので自然な流れで入ってもらったし、川上洋平君の場合は声をかけたら〈実はEDMをやりたいんです〉と向こうから言ってくれたり。どの方とも、そういう出会いとか縁があって自然に決まりましたね」。
他にもFlower/E-girlsの鷲尾伶菜、海外のEDM作品で知られるルビー・プロフェットにベラ・ブルー、YouTubeで話題を呼んだMACO(今作ではソングライティング面にも貢献)といった名前が並ぶなか、とりわけ目を惹くキャスティングが浜崎あゆみだろう。彼女は、ブーミーなベースが這い回るヒップホップ・チューン“My Way”に登場。しなやかな歌声のみならず、タイトなラップも披露している。
「浜崎さんも、まず彼女の楽曲プロデュースのオファーをいただいたので、僕らの作品にも参加してもらいたいなと。彼女がトラップっぽい曲でラップしたらおもしろいと思ったんです。以前にCrystal KayちゃんやBoAちゃんとコラボした時と同じ発想ですよね。自分の作品ではラップする機会がない人も、m-floのプラットフォームならできちゃう」。
感覚をそのまま曲にするモード
EDMの比重を高めつつも、この“My Way”など表情の異なる楽曲もたっぷりと収録。ヴァリエーション豊かな音使いで聴き手を飽きさせない、彼ら一流のエンターテイメント精神は本作でも健在だ。もっとも異色のナンバーは、ラッパーのdaokoをフィーチャーした“IRONY”。儚く内省的なサウンドにオーセンティックなブレイクビーツを仕込んだこの曲が、アルバム制作のうえで大きな契機になったという。
「daokoちゃんは自分の言葉をラップの形で表現しているけど、ヒップホップ・シーンみたいなことをあまり意識せずにやっている雰囲気が良くて。そのナチュラルな感じにすごくインスパイアされたんです。こういうトラックでラップするのも自分としては久々でおもしろかった。バリバリEDMのアルバムを作ろうと考えていたのに、実は最初に出来たのがこの曲で(笑)。そのことがアルバムの幅を広げるきっかけになりましたね」。
また、自身のタッチを模索するために初期の作品を振り返ってみたことも本作に影響しているとVERBALは語る。
「例えば“come again”はキャッチーですけど、ラップで言っていることを改めて聴いたらよくわからなかった(笑)。でもたくさんの人に受け入れられた曲なんですけどね。それって〈わけわかんなくても、カッケーからいいじゃん〉と僕らが団結していたからこそじゃないかと思い当たった。そういう発見があって、もっと感覚的に思ったことをそのまま曲にしちゃおうってモードになったんです」。
ワールドワイドに通用する鋭利なトラックを揃えた本作は、英語詞の楽曲が多いことも特徴に挙げられるかもしれない。だがそれは海外を見据えた采配というよりも、先述のような直感的な曲作りによるもののようだ。確固たるキャリアを築いた2人が改めて自由に音を紡いだ『FUTURE IS WOW』には、かつてない風通しの良さがあり、それゆえのフレッシュネスに満ちている。
「以前はセールスとか日本語のバランスを意識していたんですけど、今回は英語で思いついたら英語で良いじゃんって。それくらい肩の力が抜けているのがちょうどいい。とにかく、いまの自分たちにとってかっこよくて気持ち良いものができたし、だからこそ聴いてほしいですね」。
▼m-floの近作を紹介。
左から、2012年作『SQUARE ONE』、2013年作『NEVEN』、2013年のミックスCD『m-flo DJ MIX "ASOBON! ENKAI"』(すべてrhythm zone)
▼『FUTURE IS WOW』に参加したゲストの関連盤を一部紹介。
左から、SOLの2010年作『SOLAR: Tae Yang Vol. 1』(YG)、MNDRの2012年作『Feed Me Diamonds』(Ultra)、[Champagne]の2013年作『Me No Do Karate.』(RX/UKプロジェクト)、マット・キャブの2013年作『ONGAKU』(ワーナー)、daokoの2013年作『GRAVITY』(LOW HIGH WHO?)
▼関連盤を紹介。
左から、☆Taku Takahashiのプロデュース/リミックス曲を収録したシェネルの2013年作『AISHITERU』(ユニバーサル)、JASMINEの2013年作『Complexxx』(ソニー)、MINMIの2013年のシングル“さくら〜永遠〜”(ユニバーサル)、Hey! Say! JUMPの2013年のシングル“Ride With Me”(ジェイ・ストーム)、加藤ミリヤの2014年作『LOVELAND』(ソニー)、VERBALの客演した石川マリーの2013年作『It's me?? 〜shadow〜』(rhythm zone)、YURISAの2013年作『Love & Different』(ARTIMAGE)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2014年04月02日 18:00
更新: 2014年04月02日 18:00
ソース: bounce 365号(2014年3月25日発行)
インタヴュー・文/澤田大輔