注目を集めるアルゼンチンのアンダーグラウンド・シーン。来日したフアナ・モリーナ、カブサッキ、アレハンドロ・フラノフがその全貌を明らかにする!!

フアナ・モリーナ、(フェルナンド・)カブサッキ、アレハンドロ・フラノフ。南米はアルゼンチンからやってきたこの3人、本国では知名度も低くアンダーグラウンドな存在らしいが、ここ日本では、山本精一や山塚EYE、Buffalo Daughterらが絶賛したこともあってか、一部の耳の早いリスナーの間で大きな話題を呼んでいる。同じくアルゼンチンのモノ・フォンタナ、サンティアゴ・バスケスらと共に、〈アルゼンチンの音響派〉的な触れ込みで紹介されることの多い彼ら。確かにその作品には、シカゴのトータス周辺と(まったくの偶然に)シンクロしてしまったような、清冽で瑞々しい音響美が息づいている。と同時に、タンゴをはじめとするフォルクローレから、イギリスのプログレッシヴ・ロック、ブラジリアン・フュージョン、ドイツのECMの諸作まで、そこには実に幅広い音楽からの影響が見て取れる(実際、フアナの父はタンゴ音楽家だし、カブサッキはロバート・フィリップやエルメート・パスコアールとも共演している)。イヴェント〈TRUE PEOPLE'S CELEBRATION〉への出演のために来日した3人に話を訊いた。
――それぞれ、生まれた年と、どんな音楽に影響を受けてきたかを教えてください。
カブサッキ「生まれは65年。好きなアーティストは、ブライアン・イーノとロバート・フィリップ。それと、先住民の音楽の影響もあって、南米の民俗音楽をよく聴いたよ。あとは、バルトークのような東欧の音楽。アメリカのカントリー・ミュージックも好きだね」
フラノフ「生まれは72年。音楽は、ロックからクラシックまでいろいろ聴いたよ。アーティストでいうと、ストラヴィンスキー、フランク・ザッパ、エルメート・パスコアール、ウェザー・リポート。あとは、15歳のときにビートルズのジョージ・ハリソンがシタールを使っているのを聴いて、そこからアジアやアフリカの音楽など、エスニックなものを聴くようになった」
フアナ「私の生まれた年は……ヒミツ(笑)。……70年生まれです。子供のとき、両親の影響で、ラヴェル、ストラヴィンスキー、シェーンベルク、ドビュッシーなどを聴いていました。あとは、『Revolver』以降のビートルズ、特に『Abbey Road』が好きでした。13歳のときに父がキング・クリムゾンのアルバムを買ってくれて、それから、イエスやウェザー・リポートやピンク・フロイドなどのアルバムを自分で買うようになりました」
――アルゼンチンは80年代初頭まで長く政治的な混迷が続き、現在も経済の低迷が深刻な問題となっていますね。そうした事情から、アルゼンチンのロックには政治的/思想的なメッセージを歌いあげるバンドが多いようですが、あなた方の音楽はそうしたものとあまり縁がありませんよね?
フアナ「確かにアルゼンチンはいま大変な状況にあって、例えば警官の汚職だったりとか、政治的なテーマを歌っているアーティストも多くいます。けれど、私たちはメッセージを直接送るよりも、音楽を送りたい。確かに私の音楽には歌詞があるけれども、それは全部の歌を〈ララララ〉で歌うわけにはいかないから、とりあえず歌詞を付けている、ということです。逆に、歌詞を付けることで、メロディーが壊れたりしないように気をつけています」
カブサッキ「個人的には政治というのものに自分が参加しているという実感がないんだ。自分にとっては、音楽を作ることが日常であり現実であって、むしろ政治のほうが非日常で非現実的な感じがする」
フラノフ「僕も、現実よりも抽象的な世界に親しみながら音楽を作っている。政治的なものは僕らの音楽には出ていないと思う」
――シカゴの音響派/ポスト・ロックなどと呼ばれるシーンとの共通性を指摘されることについては、どう思っていますか?
フアナ「そのことには違和感がないし、賛成です。実際、トータスやジム・オルークもすごく好きだし。以前、友達が〈あなたがやっていることにすごく似ているわ〉と言って、ジムのCDを渡してくれたんです。他にも、日本でCDがビョークやレディオヘッドなど、すごく好きで憧れている人たちの作品といっしょに並べられているのを見て、すごく驚いたし嬉しかったです」
フラノフ「ソニック・ユースがブエノスでライヴをやったとき、前座として出演したんだけど、そのときのソニック・ユースのステージは、私の人生でいちばん良かったコンサートかもしれない。すごく感激した。それで、メンバーとして来ていたジムに挨拶したんだ」
――シカゴの人たちとは互いに影響を与え合ったということではなく、偶然同時期に同じ感覚を共有していたという、シンクロニシティーが起きているのでしょうか?
フアナ「そう思います。例えば、私が尊敬している音楽家で、ウルグアイのエドワルド・マテオっていう人がいるんですが、彼が71年に出したアルバムが、70年にニック・ドレイクが出したものにとても似ているんです。彼らはお互いのことを絶対に知らないと思うけど、そういうふうに同じようなものを感じて表現している人がいたりする。それは、ある種のマジックようなもので、それを感じる人にだけそういうものが上から降ってくるという気がするんです」

カブサッキの2000年作『The Planet』(Houses)

アレハンドロ・フラノフの2001年作『Yusuy』(Arlyd)