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第5回 ─ 「音楽配信」はいまどうなっているのか?

第5回 ─ 「音楽配信」はいまどうなっているのか?(3)

連載
デジタルミュージックガイド
公開
2002/12/12   12:00
テキスト
文/津田 大介

聴き放題サービスは日本でも定着するの?

米国のように「オンデマンド&聴き放題」というサービスモデルが主流になった米国と異なり、日本はいまだに楽曲ごとに購入するダウンロード配信が主流だ。1999年12月に大手レコード会社の中で一番初めにダウンロード型の音楽配信サービスを開始したソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)の「bitmusic」は、開始から3年が過ぎようとしているが、ダウンロード(購入)数は思った以上に伸びていないようだ。他社もこうしたダウンロード型音楽配信サービスに追随したが、どこも結果は似たようなもの。1曲あたりの価格が300~400円程度とレンタルCDと比べて「割高感」があるということや、曲を購入するごとに決済を行わなければならないなど、利便性の面での問題が多いことも不振の原因なのだろう。もちろん、ヘビーなネットユーザーの中にはファイル交換ソフトを使って違法なMP3ファイルをダウンロードしている人もいる訳で、それが影響が与えている面もあるのだろう。

ただし、こうした“停滞感”も今年の後半になって、エイベックス、SMEJが1曲あたり200円まで値下げしたことで、変わりつつある。実際に、価格が下がってからはダウンロード購入数も増えているそうだ。結局のところ、ユーザーにとって購入を決断する一番のポイントとなるのは「価格」なのだろう。SMEJは、価格を下げるだけでなく、bitmusicの登録曲数を現在の500曲から廃盤のCDを中心に年内に2000曲まで増やし、新たなユーザーの獲得を目指しているとのことだ。

興味深いのは、今年の11月に米国で自ら聴き放題型のサービス(pressplay)を運営するユニバーサルミュージックが、ダウンロード型の単曲販売サービスを開始したことだ。提供される楽曲数は、同社が保有するほぼすべての楽曲となる4万3000曲にも及び、1曲単位だけでなく、アルバム単位でも販売される。楽曲の価格は1曲99セント、アルバムは9.99ドルと、格安とまでは言えないものの、なかなか戦略的な価格設定だ。また、ダウンロード購入した楽曲はCD-Rに記録することもでき、日本のサービスと比較してもユーザビリティーの高いサービスになっている。ヘビーな音楽リスナーは、会員制サービスのpressplay、毎月会費を払うまではいかないライトな音楽リスナーは、会費のいらないダウンロード販売というように、同じ音楽配信サービスでもユーザー層の「棲み分け」を狙っているのだろう。

現在はダウンロード販売型の音楽配信サービスしか存在しない日本だが、来年には聴き放題型のサービスも登場する見込み。先日ソニー系のプロバイダーSo-netは、会員向けの会報誌で来春に定額制のオンデマンドストリーミング音楽サービス「So-net Juke」をスタートさせると告知した。楽曲数は年間で5万曲を予定しており、スタンダードなクラシックから最新のJ-POPまで幅広くカバーするとのこと。当面は系列のSMEJの音源が中心になると思われるが、レーベルの垣根を越えた動きに期待したい(ただし、現在のところ具体的な月額料金やサービス開始時期は今のところ明らかになっていない)。

 ほかにも、リアルネットワークスが米国で提供している有料会員制サービス「RealOne SuperPass」(MusicNetもこれに含まれている)の日本版が年内中から2003年初頭に開始される予定(現在、リアルネットワークス社が国内のレコード会社などと調整作業を行っている)。また、listen.comが米国で提供している「Rhapsody」も、同様のサービスを日本で始めることを検討中という話だ。
  日本と米国ではネット上の楽曲配信の著作権料や、法律などが異なっており、米国のように一気に音楽配信の普及が進むということは考えにくいが、So-net JukeやRealOne SuperPassがユーザーにとって魅力ある価格で提供されれば、一気にブレイクする可能性もある。来年は日本で本格的に音楽配信がブレイクする年になるかもしれない。音楽ファンはレコード会社やコンテンツプロバイダーの動向を要チェックだ。