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第3回 ─ カリブの熱風、TK

ESSENTIALS 忘れられない名盤たち その2

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2005/03/24   19:00
更新
2005/03/24   19:14
ソース
『bounce』 262号(2005/2/25)
テキスト
文/JAM、出嶌 孝次、林 剛

LATIMORE 『The Best Of Latimore : Sweet Vibrations』 Stateside/EMI TKの鍵盤奏者でもあったシンガー・ソングライターで、傘下のグレイズに在籍。ジャズやディスコ調の曲をやる一方、ディープ・サウスの雰囲気を持ったソウルも得意で、モニカのカヴァーでお馴染みの“Let's Straighten It Out”や“Keep The Home Fire Burnin'”といったブルージー曲をしみじみと披露。また、“Sweet Vibrations”などでメロウに迫る感じがTKらしくもある。(林)

LEON WARE 『Inside Is Love』 Fabulous/東芝EMI(1979) 後期TKに残るコレクターズ・アイテム。ジェイムズ・ブラウンよろしく、後期のTKには大物の移籍が少なくなかったが、このリオン・ウェアもそんななかのひとり。リリースされた年が年だけに、本意ではなさそうなレパートリーも散見されるが、そもそもセンスそのものが違う人なので、全体を覆う質感は流石に高品位。より深く彼の世界に浸るには絶好の一枚だ。(JAM)

LEW KIRTON 『Heaven In The Afternoon』 Expansion 元インヴィテーションズのシンガーだが、バルバドス生まれというカリビアンな出自も手伝ってか(?)、TKプロとソロ契約を結んだのがこのルー・カートンだ。これは80年にTK傘下のアルストンから放ったアルバム『Just Arrived』に、同じく傘下のマーリンから78年に出した表題シングルなどを加えたもの。アーバンなサザン・ソウルをシブい喉で歌うルーがいい。レゲエ風の曲もあり。(林)


LITTLE BEAVER 『Party Down』 Cat/Collectables(1974) ヒットらしいヒットも出せなかったシンガー兼ギタリストだが、ブルース~ファンクに根差した漆黒のソウル・マインドを素のまま伝えんとする姿勢は〈ディスコ〉と対で語られることの多いTKにあって、ブラック・レーベル本来の意地を代理露呈しているかのようだ。〈TK丸〉の出帆にこういう人の存在が実は必要不可欠だったことに、レーベルの深淵を見る思いがする。(JAM)


MILTON WRIGHT 『Friends And Buddies』 Alston/東芝EMI(1975) 妹ベティのようなヒットには恵まれなかったが、“Keep It Up”などがレア・グルーヴ的な括りで再評価されたTKの裏人気アーティスト。スペイシーなシンセを主体にメロウでレイジーな音を奏で、アコースティック・ギターを弾きながら温かなヴォーカルで歌う感じは〈TK版ホセ・フェリシアーノ〉とでもいった趣がある。フィリップ&ベティの兄妹ほか、TKの腕利き総出演の名作。(林)


PETER BROWN 『A Fantasy Love Affair』 Drive/Collectables(1978) ブルーアイランド出身の自作自演派、ピーター・ブラウン。メイスのネタ使用も有名なデビュー・ヒット“Do Ya Wanna Get Funky With Me”を含むこのファースト・アルバムは、鍵盤奏者らしいスペイシーなシンセ空間が実に洒脱。乾いたヴォーカルの青さも相まってファンキーながらもスマートな印象だ。なお、80年代の彼はマドンナ“Material Girl”を書くなど、裏方としても活躍した。(出嶌)

TIMMY THOMAS 『Why Can't We Live Together』 Glades/Collectables(1974) 本文でも触れたとおり、TKにとって忘れ難い最初のビッグ・ヒットがこのティミー・トーマスの“Why Can't We Live Together”だ。先鋭的なヒット曲作りに自信を覗かせるあたりはTK版アイザック・ヘイズかと思わせるが、変に歌えてしまう才能が保守に走らせるきらいもあった。ソウル・ファンにとってはそこが逆に人気の的だったりするのが何とも皮肉なのだが。(JAM)


VARIOUS ARTISTS 『Miami Sound』 Soul Jazz TK及びマイアミ・ソウルのナンバーは、いわゆるレア・グルーヴやディープ・ファンクのシーンでこそ〈名曲〉とされるものも多い。というわけで、マイアミで数々のレーベルが群雄割拠していた頃(67~74年)の曲を英ソウル・ジャズが編纂したのがこのコンピ。オール・ザ・ピープル“Cramp Your Style”などの定番ブレイクビーツも含み、JB調など荒削りなマイアミ・ソウル&ファンクが楽しめる。(林)