向井秀徳(ZAZEN BOYS)の語り下ろし連載がコチラ。毎回編集部が設定したシチュエーションにもっとも適する(と思われる)ディスクを向井氏に勝手に処方いただく、実用性に溢れたコーナーです。アナタの生活の一場面を、向井秀徳のフェイヴァリット・アルバムとともに過ごしてみるのはいかがでしょう? 第4回目のシチュエーションは〈夏! 海! ナンパ!〉です……が、今回の妄想もあらぬ方向へ……。今回はハードな表現が含まれておりますのでR-15指定でお届け致します。では向井秀徳、かく語りき。

(突如妄想の世界へ突入~シーン1)
高校を卒業して結局専門学校へ行った無目的の3人組がいる。俺のあくまで個人的なイメージでは、大学行くエネルギーを使いたくないし、そこまで勉強したくない、でもいきなり就職するのもイヤだっていう中ぶらりんなところで、選択肢として専門学校があるような気がする。で、その3人は思い付きだけで〈あんま〉の専門学校である大宮針灸専門学校(註:もちろん架空です)に入学するんですよ。あんま師になるっていう目的もない。そのなかには地方から出てきた奴もいる。そいつの目的っつたら東京に行くことぐらい。その専門学校で3人は出会った。無目的無関心ながらそいつらの人生はけっこうイイ調子でやれてきたんですよ。今回のテーマだと、〈夏の3人組、ビーチへ繰り出し大失敗〉みたいなイメージ湧きやすいじゃないですか? 〈全然モテない奴らが玉砕〉みたいな。そうじゃない。そのあんまの専門学校のなかには女子生徒はあんまりいないんですけど、よく美容師の専門学校の女の子とか女子大生とかと合コンしたりしてる。3人ともけっこうグッドルッキングていうか、顔だちも整っててモテるんですよね。一人はカワイイ顔系で二人はイカツい系。チャパツで肌が黒い。3人ともノリがライト。そこがまた若いバカ女には取っ付きやすいんですよ。3人でクラブに遊びに行ってそれぞれがそれぞれのガールズをゲットしたり。その3人は自分らのことをイケてる3人組だと思ってるんです。
二人は埼玉の実家に住んでるんですよ。埼玉出身の奴二人と茨城から出てきた奴。で、一人の実家の奴がワンボックス・カーを買った。というかそいつは乗りたい車を親に買わせてるんですよね。その3人組では、何かあるたびに3人の仲間意識を確認し合うがごとく言い合う合い言葉がある。それは「超ノッてろよーー!!」。普通に「超ノッてるねー」とかじゃない。俺らには理解できないんですけど、その3人組で流行ってるっていうか、〈俺ら最高〉みたいなニュアンスの言葉。で、一人の実家の奴が「ワンボックス・カー買った」っつったら、みんないっせーに「超ノッてろよーー!!」「超ノッてろよーー!!」て言い合ってはしゃぐ。それに乗って「海行ってろよーー!!」「行ってろよーー!!」って言い出す。
(シーン2)
そしてワンボックス・カーが海へ向けて走り出す。3人組の共通のテーマソングがあって、グォングォン低音を響かせながら聴く曲がスヌープ・ドギー・ドッグの“Who Am I(What's My Name)?”(『Doggystyle』収録)。これをガンガンかけながら大宮針灸専門学校の奴らが車を飛ばす。千葉方面の海岸線をずっと行くと、古い使われてないバス停が見える。そのバス停を通ったときに、ベンチに人が座ってるのを見たんですね。なぜか手拭いをほっかむりにした人がいる。3人は〈地元の漁師かなんかかな?〉とかの意識もせずに海へと急ぐ。海水浴場にはそこそこ人がいるんだけど、神奈川のほうの海じゃないからそんなにゴッタ返してはいない。地元のバカ女みたいな奴がわらわらいる。3人は「いるじゃんいるじゃんノッてろよーー!!」て言い合って早速ナンパの行動を開始する。もうこのうえなく軽いノリで女3人組とかに近付いていくわけだ。軽薄なバカ女どもに軽薄に近付いてって「軽く海の家でコーラ飲もうよ」って誘う。海の家はけっこう寂れて辛気くさいところで、注文したドリンクを運んできた人もほっかむりをしてる。愛想も悪い。でもそんなものかまいもせず3人は軽薄な喋りでそのバカ女どもを魅きつけていく。盛り上がる。

元祖鶏ガラチキンラーメン
(シーン3)
海岸も日が暮れはじめてきて、いっしょに花火しようということになる。その3人組にとってはそれが第2段階。第3段階で決めるみたいな感じですわ。花火をしはじめてキレイだキレイだって話になって。海水浴に来てる人もそんなにいなくなって、波の音がザザーンとしている。イイ感じになってきて第2段階ラストスパートかける。3人組はその時点で女どもを〈お前〉呼ばわりしてる。そこでイニシアティブをとってるわけです。「お前らさー地元ー?」「言ってろよー」「マジ地元かよー」と。地元であることにすごいはしゃいでる。で、第3段階はやることひとつですよ。そのバカ女どもにブチ込むだけです。そいつらの頭の中はそれしか考えてない。当然バカ女どももその気になってるから、花火やりつつ相手が決まっていって、自然に3班にわかれて、それぞれビーチの奥の茂みのほうに行く。
(シーン4)
3人はノリでいきつつも自分の世界に入りやすい男たちで、みんなで集まるとワーワーキャーキャーはしゃいでるんですけど、女の子と二人きりになったりするとすごいキザになるんですよ。それで自分を盛り上げるタイプ。声のトーンを落として「お前さー、千葉でいっちゃんカワイイと思うよ」みたいな。「お前に出会うために今日はここに来たんだよな」とか言って、立ったままいきなりおっぱじまる。バックに流れてくるのはコイツらが中学校のとき好きだったボーイズ2メンの“I'll Make Love To You”(『II』収録)。ジョニー・ギルでもいいんですけど(笑)。すごいメロウなバラードが流れてるんだけど、その若者たちの行為はホントに動物的なもので。オスになってる。そういった行為を後ろに回ってやってた男の後頭部になんか固いものが当たる。友達が来たかと思って「お前らあっちでノッてろよーー!」て言うんだけど、返答がない。振り向くとほっかむりの男がいるんです。暗いからよく見えないんですけど、なんかひょっとこのお面被ってる。その男の名前はTOSATSUマン。後頭部に当たってるものはライフルなんですね。M-16。その瞬間バックに流れるのはメタリカの“Frantic”(『St. Anger』収録)。そいつが凍り付く。行為をしてたナニも一瞬にして萎む。M-16の銃口が火を吹いて、そいつの首から上が全部なくなるんです。
(シーン5)
そこでパッとシーンが変わって、また別の奴が茂みのなかで囁き合ってるわけです。さっきのひょっとこの男がもう一組のほうに歩いていく。その姿はほっかむりしてひょっとこの面を被って、裸にオーバーオールを着ている。M-16と腰には青龍刀を携えてる。日も沈んだ波の音しか聴こえない砂浜を歩いていく男のバックにかかるのはREBEL FAMILIAの“MIND WAR”(『REBEL FAMILIA』収録)。二組目の犠牲者のところに辿り着いて、今度は青龍刀を腰から引き抜こうとする。その二組目の男のほうは3人のなかでもいちばん腕っぷしに自信がある奴で、ひょっとこのほっかむり男を見た瞬間、恐怖より先に「なんだ? お前は」と下半身を露出したまま立ち向かっていくんです。そこでひょっとこ男は妙にカン高い声で「TOSATSUーー!!」って言うんですよ(笑)。そして青龍刀をイキりたった野郎の露出部に振り下ろす。「イデーー!!」て男は言う。そして露出部はポーンって飛んでいきます。
(シーン6)
また場面は変わりまして、〈3人目はどこに? 〉て感じなんですけど、「イデーー!!」って言う声を聞いて、いちばんカワイイ顔した最後の男は何が起こった?と思う。〈ヤッてる最中に野犬にでも噛まれたか?〉と。「俺ちょっと見てくるわ」と行為を中断して砂浜に向かうわけよ。昼間までけっこう賑やかだったビーチがシーンとしていて波の音しか聞こえない。それで男はちょっと不安になって身構えしながら歩いていくんです。そのバックにかかってるのがマーク・スチュアート&マフィアの不穏なダブ・サウンド。
(シーン7)
3組目の残された女のシーンに切り替わる。そいつは、上はビキニ水着を付けて下はおっぴろげ。M字開脚で横たわって電話してる。男が戻ってきてすぐ開始できるようにその状態のまま待ってるんです。電話で友達に「東京モンとヤッてる最中」みたいなことを自慢げに言う。で、なんか股間に異物感を感じるわけよ。女は〈冷たい感触。でもけっこうカタイ〉とか思ったりする。ふっと股間のほうを見るとTOSATSUマンがレミントンショットガン・ライフルの筒先を股間にぶち込んでる。メタリカ“Dirty Window”(『St. Anger』収録)が流れてバカ女は凍りつく。電話先では「ナッちゃんどうした? ナッちゃんどうした?」て友達が言ってる。TOSATSUマンが弾を装填するためにレミントンショットガン・ライフルのポンプ部分をガチャン!てやったその振動が女にとってはちょっと心地いい。……と思った瞬間にレミントン・ライフルが発射されるわけです。そしてMの字が跳ね上がってWの字になる(笑)。

向井秀徳直筆、TOSATSUマン
(シーン8)
そこで友達を探しに行ってる男が銃声に気付く。「なんだなんだ?」て下半身を露出したまま駆け足で戻ってくる。その向こうには左手に青龍刀を持ち右手に44マグナムを持ったTOSATSUマンが立っている。男は一瞬何物かわからない。TOSATSUマンはその男めがけていきなり走り出した。男は危険を察知してダッシュで逃げるわけです。TOSATSUマンは「TOSATSUーー!!」て言いながらすごく速い。BGMはメタリカ“Some Kind Of Monster”(『St. Anger』収録)。男は堪えきれなくて、海に飛び込んで逃げて必死に泳ぐ。TOSATSUマンはどうやら水が苦手らしくて、水際まで行って追い掛けることはしない。TOSATSUマンは泳げなかったんですね。その一人生き残った男は近海まで泳いで「これで終わった……」と言って安堵するんです。と、そう思った瞬間に水中から原子力潜水艦がガサー!!と現れる。パカーンとその扉が開いて何物かの工作員らしき男たちに船内に引きずり込まれる。そして原子力潜水艦は沈んでいく。大宮針灸専門学校の奴らもこんなことになるとは思ってなかった(笑)。それをジーッと見ていた水際のTOSATSUマンは、また茂みのほうに戻っていくんです。画面には海岸線だけが残る。波の音だけがするなかエンドロールが流れてきて、メタリカの“Shoot Me Again”(『St. Anger』収録)が流れると。タイトルは「TOSATSU」。(完)(インタビュー/久保田泰平)
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