スポットライトを浴びた裏方たちが受け継いだモータウンのスピリット
7月1日、ルーサー・ヴァンドロスと同じ日にソウル・グレイツがもうひとり、この世を去った。フォー・トップスのオービーことレナルド・ベンソン。享年69歳。オービーといえば同グループのメンバーとしてのみならず、マーヴィン・ゲイの名曲“What's Going On”のソングライターのひとりとしても記憶されるべき人物だ。ネルソン・ジョージの名著「モータウン・ミュージック」には、オービーが(共作者の)アル・クリーヴランドと60年代末の社会的大変動について話しているうちにギターで幻想的なメロディーを奏ではじめた……といった旨の記述があるが、仮に“What's Going On”を〈ニュー・ソウル〉の元祖的な曲と捉えるなら、オービーはそのオリジネイターとも言える。結果的に“What's Going On”は、映画「永遠のモータウン」でファンク・ブラザーズの最期と絡めて語られていたように、〈デトロイト・モータウン〉の終焉を告げる曲となった。しかし、そこに関わっていたミュージシャンたちの多くは、舞台がデトロイトであれ、新拠点となったLAであれ、ふたたび新しい道を歩みはじめ、数々の素晴らしい仕事を残してくれたのだ。そんな70年代初頭以降の前向きな動きを、今回は〈アフター・モータウン〉と称して再評価したい。
そこでまず筆頭に挙げたいのがモータウンの楽曲制作に携わってきたクリエイターたちのアルバム・リリース。70年代初頭にはメジャー・レーベルが独立レーベルからアーティストや専属作家を奪い取る動きが活発化、優秀な人材を数多く抱えていたモータウンも格好の標的となって、フォー・トップスらが籍を移している。そんななか、ラモン・ドジャー、ジョニー・ブリストル、リオン・ウェア、ウィリー・ハッチといったモータウンの作家たちがこぞって表舞台に登場してきたという事実……これは〈ニュー・ソウル〉云々とは別にもっと騒がれていい。彼らの作品の多くはLAのミュージシャンを起用していたが、それでもノーザン・ビートを捨て切れていなかったり、音そのもの以上にモータウンのスピリットを継承していたという点でも称えられるべきものだろう。一方、元ファンク・ブラザーズの面々は、メンバー全員が生き残ったわけではないが、ドラマティックスらの作品でダイナミックなプレイを聴かせ、デトロイト・サウンドの中核を担っていた。また、プロデューサーのノーマン・ホイットフィールドはLAに新天地を求めながらローズ・ロイスらの作品でデトロイト仕込みの重厚なファンクを展開した。
モータウン関係者の〈その後〉は、過去の偉業に目を奪われ、時にソウル・ミュージックの歴史から切り捨てられてしまうこともある。けれど各方面に散らばりながらも、彼らはデトロイトのグルーヴを絶やすまいと尽力していた。そのことを、いま一度噛みしめてもらいたい。ちなみに〈アフター・モータウン〉の最大勢力といえば……そう、インヴィクタス/ホット・ワックス。この名門レーベルについても近いうちに本連載で語られる日がやってくるだろう。