BETTY EVERETT 『It's In His Kiss』(1963)
ジェリー・バトラーとも共演した歌姫によるVJ時代のアルバム。〈The Shoop Shoop Song〉の副題でもお馴染みのポップな表題曲や、リンダ・ロンシュタットらが歌った“You're No Good”を含み、ゴスペル上がりのコッテリした黒さを湛えて気持ち良く伸びていく歌唱が胸を打つ。今回のCD化では5曲を追加、ヴァン・マッコイやアシュフォード&シンプソンが書いたプレ・シカゴ・ソウル的な楽曲も楽しめる。
(林)
DEE CLARK 『You're Looking Good.....』(1960)
ゴスペル~ドゥワップ界での実績を引っ提げてソロ・デビューしたシカゴ育ちの美声クル-ナー。リトル・リチャード風のロックンロール、サム・クックのパクリ、レイ・チャールズ“What'd I Say”のカヴァーなどが混在し、リズム&ブルースが〈ソウル〉と呼ばれはじめた過渡期ならではのゴチャゴチャ感が楽しい。ボ・ディドリーが広めたジャングル・ビートの原型にあたる〈ハンボーン〉リズムの曲も痛快!!
(出嶌)
THE DELLS 『Oh, What A Night』(1959)
いまも現役で活動を続けるシカゴの名門ヴォーカル・グループ、デルズのデビュー・アルバム。プロデュースはVJのA&Rだったカルヴィン・カーターで、後のカデット時代にも吹き込むことになる表題曲など、この時代の曲はほとんどがドゥワップ・スタイルだ。マーヴィン・ジュニアの若々しいバリトン・ヴォイスもムードたっぷり。ソウル・スタイルに移行する前の街角ハーモニー、これが彼らの原点。
(林)
THE EL DORADOS 『Crazy Little Mama』(1957)
54年にヴィー・ジェイと契約したドゥワップ・グループ、唯一のアルバム。ビーチ・ボーイズあたりにも継承されていった清涼なコーラス・ワークが楽しい“At My Front Door”など、陽性のアップ・ナンバーこそが彼らの持ち味なのは確か。ただ、ブルース・マナーに則ったバラード“My Lovin' Baby”でもその黄金のハーモニーはキラキラ輝いている。このリイシュー盤にはマグニフィセンツの音源も追加収録。
(出嶌)
GENE ALLISON 『Gene Allison』(1959)
ナッシュヴィル出身のシンガーが、VJに残した唯一のアルバム。包容力のある歌い回しに粗削りなフィーリングを覗かせるジャンプ系の“Hey, Hey I Love You”なども最高に格好いいが、強力なのはゴスペル的な昂揚感とブルージーなコクが粋に共存したバラード群。ソロモン・バークやローリング・ストーンズもカヴァーした名曲“You Can Make It If You Try”は言わずもがな、端麗な“I Believe In Myself”がとりわけ美味!
(出嶌)
GENE CHANDLLER 『The Duke Of Earl』(1961)
シカゴ・ソウル屈指のシンガーがソロとして初めて成功を掴んだ、伯爵姿も微笑ましい出世作。収録曲の多くはカヴァーだが、白眉はやはりVJ初のミリオン・ヒットとなったオールディーズ路線の表題曲(当初はデューケイズとして録音)だろう。まろやかでコクのあるヴォーカルはこの人の専売特許。カーティス・メイフィールド作の“Rainbow”ほか、追加収録されたシングル曲も必聴だ。
(林)
THE IMPRESSIONS WITH JERRY BUTLER 『For Your Precious Love』(1963)
ABC~カートム時代の楽曲が有名なインプレッションズだが、ジェリー・バトラーがカーティス・メイフィールドとの二枚看板で大半のリードを取った最初期の楽曲群も忘れられない。ジェリーが深々とした歌声を聴かせる厳かな表題曲はソウル史に残る名品だ。ゴスペルとドゥワップのルーツを垣間見せながら美しいハーモニーを紡ぎ出すこの素晴らしさよ!
(林)
JERRY BUTLER 『Aware Of Love』(1961)
後に〈アイスマン〉の愛称を授かるジェリー・バトラーがインプレッションズ脱退後に発表したソロ3作目。ダンディズムの薫るバリトン・ヴォイスでバラードを歌い上げる彼の魅力が存分に発揮された作品で、やはり良いのはボーナス曲も含めたカーティス・メイフィールド作となるシカゴ・ソウル・スタイルの曲だろう。ジャケの雰囲気に沿ったロマンス・ムードのポップな曲は時代の産物ということで……。
(林)
JIMMY HUGHES 『Steal Away』(1964)
ヴォルトなどにも録音を残すサザン・ソウル・シンガーのデビュー作。リック・ホールによるフェイム録音作をVJが配給したもので、脇を固めるのはダン・ペンら初期のマッスル・ショールズ人脈だ。後年ジョニー・テイラーも歌った表題曲はジミーの出世曲となった不倫バラード。教会で鍛えたハイトーンの歌声を持ち味とし、ジェイムズ・ブラウン“Try Me”などのカヴァーもスムーズに歌い込んでいる。
(林)
JOHN LEE HOOKER 『The Big Soul Of John Lee Hooker』(1962)
VJはシカゴ・ブルースの宝庫でもあるわけだが、ここではソウル・ファン向けの一枚を紹介。デトロイトを拠点としていた彼らしく、モータウンから迎えた(マーサ&)ヴァンデラスを全編にフィーチャーした展開は一様にソウルフル。密やかなオルガンと女声コーラスで紡がれる“Take A Look At Yourself”などとお得意のブギー曲などがドス黒く共存した凄まじい内容。
(出嶌)
THE STAPLE SINGERS 『Will The Circle Be Unbroken』(1960)
後にスタックスでブレイクするファミリー・ゴスペル・グループが、その初期に在籍していたのが地元シカゴのVJだった。これは同レーベルからの2作目。ゴスペルの伝統曲などを父ポップスによるブルージー&フォーキーなギターに合わせて歌っていく、ちょっぴり世俗的なスタイルは、後の彼らを連想させる。ギリギリ10代だったはずの娘メイヴィスの大人びた歌唱も説得力十分だ。
(林)