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第15回 ─ よそ者たちのフィラデルフィア

ESSENTIALS いまもフレッシュな名盤たち その2

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2006/06/22   18:00
更新
2006/06/22   19:22
ソース
『bounce』 276号(2006/5/25)
テキスト
文/林 剛

THE JONESES 『The Joneses』 Epic/ソニー(1977)

  NYを拠点にスウィート~モダンなナンバーを歌ってきたグループがメンバー・チェンジを経てリリースしたアルバム。勢いのあるテナーとシブいバリトンを中心としたヴォーカル・ワークは、ボビー・イーライのプロデュースによる躍動感溢れるMFSBサウンドと抜群の相性を見せ、フィリー・ダンサーからスウィート曲まで粒揃い。数あるフィリー詣で盤のなかでも、とりわけ充実した内容を誇る名作だ。

THE MANHATTANS 『The Manhattans』 Columbia/ソニー(1976)

  ジェラルド・アルストンを新リードに迎え、コロムビア移籍と同時にフィリー詣でをして成功を掴んだ名門グループ。ニュージャージーを拠点としながら70年代を通じてMFSB一派のボビー・マーティンと組んだ彼らの代表作がこれで、あの名バラード“Kiss And Say Goodbye”も含む。バート・デコトー制作のNY録音曲を含むもフィリー色全開。それでもサウンドに翻弄されていないのは流石だ。

TAVARES 『Madam Butterfly』 Capitol/Collectables(1979)

  ディスコ・ヒットでもお馴染みの兄弟グループが、MFSB一派から独立したボビー・マーティンやロン・カーシーの助力を得て録音したアルバム。グレイ&ハンクスやサム・ディーズ作の曲を歌い、演奏陣もシグマの常連ではないので〈フィリー詣で〉とは言えないが、ボビーやロンのプロデュース/アレンジは紛うかたなきフィリー・マナー。メンバーたちもフィリーの音で歌ってみたかったのだろう。

THE TEMPREES 『Three』 We Produce/Stax(1974)

  〈スタックス版デルフォニックス〉とも呼ばれたスウィートな3人組、ゆえにフィリー詣では必然だったのかも。リズム隊にMFSBの精鋭が参加したグループの3作目。とはいえ、プロデュースを手掛けたレスター・スネルほか、管弦を含む演奏陣はメンフィスのミュージシャンで、録音もフィリー(シグマではない)とメンフィスの両方で行われている。フィリー勢の力を借りる格好でフィリーを模した好作だ。

THE WHISPERS 『Bingo : The Janus Recordings 1972-1974』 Sanctuary 

  後にソーラーの看板グループとなるLA出身の彼らもフィリー詣でをしていた。ジェイナス時代の楽曲から成る本アンソロジーに丸ごと収録された『Bingo』(74年)がそれで、ロニー・ベイカー+ノーマン・ハリス+アール・ヤングの制作曲を中心に、極上のフィリー・ダンサーからバラードまでを聴かせる。あまりの相性の良さにギャンブル&ハフが契約話を持ちかけたのも有名な話。