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第23回 ─ スタックスの遺産(その2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/05/31   12:00
更新
2007/05/31   17:50
ソース
『bounce』 287号(2007/5/25)
テキスト
文/林 剛

再スタートから新時代の到来まで、68~71年の過渡期に何が起こったか?

 新生スタックスが順調だ。ジョニー・テイラーの未発表音源を含むライヴ盤『Live At The Summit Club』などのリイシューに加えて、今度はソウライヴの新作『No Place Like Soul』のリリースときた。ブッカー・T&ザ・MG'sにも通じるオルガン主体のソウル・ジャズ・バンドだけに、まさにスタックスに相応しい人選。今後が楽しみだ。

 ただ、スタックスが〈新生〉したのは今回が初めてではない。アトランティックの配給を離れた後、スタックスは〈新生〉していたのだ。オーティス・レディングの死やサム&デイヴのレーベル離脱などで、いったん幕を下ろしかけたスタックスではあったが、68年5月に巨大企業のガルフ&ウェスタン(G&W)の傘下に入って再スタートを切った。レーベル・ロゴも〈指スナップ〉のものに変更(傍系のヴォルトは稲妻マークに)。早速、ジョニー・テイラーの“Who's Making Love”(68年)が大ヒットとなり、さらにアイザック・ヘイズが傍系のエンタープライズから出したソロ・アルバム『Hot Buttered Soul』(69年)も爆発的なセールスを上げたことで息を吹き返す。

 もっとも会社が変革/成長していく反面、それまでの人間関係が悪化しはじめるなど、社内は波乱に満ちていたともいう。副社長に就任していたアル・ベルの改革姿勢もその原因のひとつとされるが、しかし、それゆえスタックスには全米各地から有能なアーティスト(ステイプル・シンガーズ、エモーションズ、ドラマティックスなど)が集まり、デトロイトのドン・デイヴィスをプロデューサー陣に起用することで、華やかに成長を遂げていったのだ。もちろん旧スタックス時代からの顔ぶれも継続して活動を行い、バーケイズも新編成で再始動。地元メンフィスからはソウル・チルドレンも入社し、ホーマー・バンクスらが名乗った作家チーム〈We Three〉も台頭。やがて、G&Wの管理下で窮屈な思いをしていたスタックスは自社株を取り戻した……が、それも束の間、72年になると今度はCBSに買収される。レーベルはまた新たな局面を迎えていた。【次回に続く】