ESSENTIALS 素通りできない逸品たち その1
AL GREEN 『Lay It Down』 Blue Note(2008)
往年のハイ・サウンドを再現してみせるというクェストラヴたちの一途な思いに、62歳のアル・グリーンが本気で応えた今年最高峰のヴェテラン作品。ダップ・キングスのホーン隊も招いて仕上げたサウンドは、まさに〈メンフィス・エレガンス〉そのものだ。アンソニー・ハミルトンやジョン・レジェンド、コリーヌ・ベイリー・レイの参加も華を添えているが、いい具合に枯れたアルの歌声がやはりいちばん沁みる。
BAR-KAYS 『House Party』 I.M.(2007)
60~70年代にスタックスのバンドとして活躍し、以降もファンク重戦車として暴れまくったバーケイズ。そんな彼らの最近作は、今様サウス・ビートに身を任せ、進化するバンドであることを改めて見せつけた熟年パワー炸裂の一枚である。極めつけは、大将ジェイムズ・アレクサンダー(57歳)の息子であるジャジー・フェイが制作/客演した“Sho Nuff”。ラリー・ドッドソン(56歳)のエグい歌唱も健在だ。
BILLY GRIFFIN 『Like Water』 RNB(2006)
スモーキー・ロビンソンの後釜としてミラクルズに加入し、ソロ転向後もヒットを放ったビリー・グリフィン。これは久々のソロ作となるが、56歳になっても20年前のままの80'sアーバンなスタイルを武器に、ファルセットを交えた甘くスムースな歌声を聴かせてくれている。90年代にパサデナズやテイク・ザットといったUKの若手グループに関与したことで、洒脱なセンスにいっそう磨きを掛けたようだ。
CHUCK BROWN 『We're About The Business』 Raw Venture(2007)
ワシントンDCで発生した地元密着型ファンク=ゴーゴーのゴッドファーザーが、72歳にして作り上げた最新アルバム。チャッキー・トンプソンと組んだ本作では、ラヒーム・デヴォーンやDJクールら地元の後進を招き、チャック自身もラップを披露するなどしてゴーゴーのアップデートを図った。その甲斐あってR&Bチャートで2位を記録! もちろんコッテリとしたグルーヴは全盛期のままだ。
GERALD ALSTON 『Sings Sam Cooke』 Love Songs Touring(2008)
マンハッタンズ全盛期(70~80年代)のリードを務めたジェラルド・アルストン。ソロになってからも20年が経つわけだが、自他共に認める〈サム・クックの後継者〉が久々に放ったこの新作はサム名曲のカヴァー集だった。当然ドンピシャの企画で、サムのサパー・クラブ歌手的なスマートさも受け継ぎながら熱く歌い上げる。ウータン・クランの近作にも招かれていた56歳は、いまも現役バリバリなのだ。
L.J. REYNOLDS 『The Message』 Crystal Rose(2008)
ドラマティックスの看板シンガーとして歌い続け、並行してソロ作も出してきたLJ・レイノルズは、ソウル・ファンのハートを鷲掴みにするような強靭な喉の持ち主だ。55歳を迎える今年、8年ぶりに出したこの最新ソロ作は、以前にも取り組んだことのあるゴスペル作品。舞台を世俗から教会に移したところでLJの歌が変化するはずもなく、マイケルJ・パウエルらの援護を受けてソウルフルに歌い込む。