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OSHIETAL【特別編】 FINLAND FEST 2010

連載
360°
公開
2010/06/17   16:55
更新
2010/06/17   19:02
ソース
bounce 320号 (2010年4月25日発行)
テキスト
文/山口コージー

 

フィンランド、フィンランド。ノキアやマリメッコ、〈ムーミン〉のトーベ・ヤンソン、アキ・カウリスマキ監督、ファイヴ・コーナーズ・クィンテット、トゥオモなどの名前を思い浮かべる人も多いでしょうか。が、ダイノジ大地の連覇で知られる例の〈エアギター世界選手権〉が96年からオウルで開催されているように、ここはハード・ロック~ヘヴィーメタル大国でもあるのですよ……

 

 

今日でこそ、フィンランド産ハード・ロック~ヘヴィーメタルは〈フィニッシュ・メタル〉と総称されるまでに浸透し、シーンにおいて欠かせない存在となった。ここでは、いまや世界規模に拡大したその〈フィニッシュ・メタル〉がどのように浸透してきたのか、その歴史を教えたる!

まず、フィニッシュ・ロック史を語るうえで欠かせないバンドがある! 80年代初頭に姿を現し、いまや伝説と化したハノイ・ロックスだ! そのグラマラスだけど北欧独特のクールさを兼ね備えたロックンロールは、次第に欧州~日本~USへと人気を飛び火させ、それまで未知に等しかったフィンランド産ロックンロールの存在を世界的に知らしめることに成功したのだ。彼らが後のガンズ・アンド・ローゼズなど〈バッド・ボーイズ・ロックンロール〉ムーヴメントに及ぼした影響は計り知れないだろう。しかし、その音はストレートなロックンロールだったため、まだまだ〈フィニッシュ・メタル〉の確立には程遠かったと言える。

その後ハノイの解散を経て、80年代中期に登場したタロットの存在も大きかったものの、フィンランド産メタル全体の活性化は90年代まで待たなければならなかった。そして登場したのがストラトヴァリウスだ! 疾走的で叙情的で大袈裟なまでの様式美を追求したサウンドは〈メロディック・スピード・メタル〉と呼ばれ、以降のメロディック・デス・メタルなどに大きな影響を与えていく。同時に、いまも根強い人気を誇るアモルフィスやセンテンストといった独自性のあるバンドも登場し、シーン全体の勢いは一気に加速していくこととなる。

 

 

しかし何と言っても、その究極のサウンドで〈フィニッシュ・メタル〉を世界に浸透させたバンドの名前を忘れるわけにはいかない……そう、チルドレン・オブ・ボドムである! 研ぎ澄まされたエッジーさとシンセサイザーを駆使したモダンさを兼ね備え、それでいて古き良き国産メタルからの影響も窺わせる彼らのスタイルは、世界的成功の鍵を握るバンドとして周囲の期待を集め、それが見事的中! いまや世界を代表するバンドとなり、〈フィニッシュ・メタル〉そのものの浸透にも大いに貢献していくこととなった。

これを機にストラトヴァリウスの意志を受け継ぐソナタ・アークティカ、クラシックとの融合で話題となったアポカリプティカ、男のエロティシズムを前面に押し出した通称〈ラヴ・メタル〉で全欧の女性たちをノックアウトしたHIM、ポップな側面を強調したラスマスやネガティヴらが登場することによって、US/UK中心だったそれまでのハード&ヘヴィー・シーンは一変され、今日の状況に至るわけである。

簡単にまとめると以上のような歴史を経てきた〈フィニッシュ・メタル〉勢。当然のようにサウンド志向はさまざまなわけだが、そのすべてに通じるキーワードがある。それはフィンランドの土壌が作り上げた冷ややかなサウンドだろう。〈青白き炎の如く燃え上がる冷徹な激しさ〉があるからこそ、今日の彼らがあると言っても過言ではない。そう、〈冷めた激情〉なくしてこの音世界はありえないのだ! フィンランドを知らずしてメタルをカタルべからず!!

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