クァンティックの辿ってきた世界を、いま一度振り返ってみよう
昨年リリースされて、ミュージック・ラヴァーの間で高い評価を得たクァンティック&ヒズ・コンボ・バルバロの『Tradition In Transition』もいまなお鮮烈な印象を残すなか、クァンティックがまたしても新たな旅の便りを届けてくれました。今度はクァンティック・プレゼンタ・フラワーリング・インフェルノ名義でのニュー・アルバム『Dog With A Rope』が登場したのです。
さまざまな名義を駆使しながら、ほぼ年1枚のペースでクォリティーの高い作品をリリースしてくるクァンティックことウィル・ホランド。彼がUKから南米コロンビアへと移住して数年が経ちましたが、地元の音楽家たちと積極的に交流して現地の伝統音楽を吸収するだけでなく、その要素をさまざまなエッセンスと交配したり、混合したりすることでトラディショナルなサウンドを現代的にアップデートする動きは、いよいよ彼のなかで血肉化されてきたようです。その極上の成果とも言えたのが前作『Tradition In Transition』だとしたら、今回の『Dog With A Rope』はそれよりももう少しスケールの大きな形でまとめられているようですね。
レゲエ~ダブとラテン音楽を『Death Of The Revolution』以上にタイトな形に結び付け、中南米からカリブで煌めく気持ち良いトロピカル成分を濃縮還元パックしたような今回の作品には、スティール・パルスなどのバックを担ったドラマーのコンラッド・ケリーのようなミュージシャンも参加している模様。これはまたしても心地良さそうな仕上がりなのです。
そんなクァンティックの音楽は予備知識ナシでも楽しめるものではありますが、一方では彼の振りまくキーワードが妙に記号的に響いてしまうという可能性も孕んでいますね。ここではこれまでの彼が辿ってきた道程をうっすら理解しつつ、自分好みのフレイヴァーを見つけだしていただきたい!と思うわけです。
▼関連盤を紹介。
クァンティックによる2009年のミックスCD『Caja Y Guacharacha』(Mochilla)
▼クァンティック選曲のファンク・コンピを紹介。
左から、2005年の『Quantic Presents World's Rarest Funk 45s』、2008年の『Quantic Presents The World's Rarest Funk 45s Vol.2』(共にJazzman)